第95話:霊の通り道

 

僕の当番もあと2話・・・といっても、もうネタ切れだ。

かろうじてまだ固まりきってない話があるにはあるが、どうしよう。

仕方が無い、1分1秒でも惜しい状況だ、話しながらストーリーを固めていこう。

 

「みんな『霊道』って知ってる?その名の通り、霊の通り道なんだけどさ、それって昔から多くあって空にもあって、

 例えば霊山と霊山の山頂を真っ直ぐ結んだ道筋が霊道になるから、町の上空とかにそれがある訳、だから昔なんかは、

 そういうのを直接目にする事も少ないし、影響も受けなかったんだけど・・・今って高層ビルが凄く増えたうえに、

 オフィスビルだけじゃなくマンションも30階40階ってなってきちゃってるから、そういう所に住んでいる部屋なんかが、

 モロに霊道になっちゃったりするんだって。そういう家っていうのは不自然に住んでる人がコロコロ変わったり、

 タチが悪いと行方不明とか次々と変死とか・・・この話をしてくれた人は不動産屋なんだけど、そういう訳有り物件って、

 お店自体にも悪い評判が立っちゃうから何とか解決しようと、その人自身が泊まって原因を探ろうと思ったんだって、

 ほら、霊の仕業とか思われるようなラップ音って原因は柱のきしみだったり水道管の温度差だったり、マンションだと、

 近隣の部屋からの振動だったりとか電磁波とか・・・でもその訳有り物件っていうのは、なぜか変死が多発する部屋で、

 その・・・満月、いや、新月の日に決まって心臓発作とか謎の死をとげるんだって、絶対に突然死しなさそうな健康な人、

 親が金持ちな学生から中高年まで、男女関係なく・・・で不動産屋の人が泊まりはじめた頃は何も問題なく、

 住みながら色々な箇所をチェックしたんだけど、物理的には何もなさそうで、ごく普通に快適に暮らせる環境らしいんだ、

 念のため隣の部屋に聞き込みしても、壁が厚いから隣からは何も聞こえない、空調もおかしくないから酸欠とかでもなさそう、

 ただあくまで本番は新月の夜だからって、自分で監視用にカメラまで設置してその日に備えたんだけど・・・」

 

静寂に包まれ、空気が張り詰める。

 

「毎晩泊まっているうちに、夜中の3時前に決まって外の風が強くなる事に気付いたんだって、

 これはその時間に何かある!とピンときて、新月の夜中に起きていられるように睡眠や体調を整えて備えたんだ、

 そして迎えた運命の夜・・・コーヒーを飲みながらテレビを見てたんだけど、なぜか2時半を過ぎたあたりから、

 テレビにノイズが入るようになってきたんだって、外の風もびゅうびゅうと強くなってきてあきらかにぶつかってきてて、

 何となくこれはおかしい、普通じゃないなと少し恐怖心が芽生えはじめた頃・・・急にテレビと照明が消えたんだって、

 強風による停電かな?それとも、あたり一帯の停電?と、街を見下ろそうとカーテンを開けたら、とんでもない物が目に入ったんだ、

 ぶつかってきている風っていうのが、白い霧か煙の固まりみたいなもので、それは人の、裸の女性の形をしている、

 それも何人も、何十人も、霊の集合体という感じで・・・しかもその塊が何度も何度も窓にぶつかってきて入ろうとしてきてる!

 どうしようガラスが割られる、でも開けたら奴らが入ってくる、逃げようにも外に奴らがいる訳だから下手に出られない、

 そう思いながら女性の霊を見てたら目が合って、いやらしい感じで舌を出したり、胸を揉んだり、股間をまさぐったり・・・

 挑発していきている霊を見ているうちにすっかり勃起しちゃって、開けちゃいけない!と思っても、何かに取り憑かれたように、

 ゆっくり、ゆっくりと、窓に手が・・・開けたらやばいっていう自分の意思と、開けさせようとする霊の意思が葛藤するみたいに、

 手がぶるぶる震えてたんんだけど・・・しばらくして、どうしても股間が疼いて我慢できなくなっちゃって、ついに・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「ガチャッ、て窓を開けちゃったんだ、すると外で渦巻いていた裸の女の霊が、一斉に窓の隙間から入ってきて群がってきて、

 捲きつくように体中を這ってきて、服なんか通り抜ける感じで全身を愛撫したり吸い付いたりしてきて、あっという間にイッちゃって、

 イッてもイッても女体の固まりに飲み込まれるように犯され続けて、萎える暇も、休む暇もなく延々といかされ続けて・・・

 ああ、こうやって住人は死んでいったんだ、こんな快感の嵐、心臓がもつわけがないと理解したんだけど、一瞬、死の恐怖で正気に戻って、

 何とか逃げようと思ったんだけど、そこでひらめいたんだ、まだ強い風が外では吹いている、こいつらはそれに乗ってやってきた、

 と、いう事は・・・ガクガクと震える足をこらえ、まだ軽い射精を繰り返しながらも渾身の力をふりしぼって、行き着いた先は・・・

 反対側の窓だったんだ、そこを倒れながら開けると・・・強い風が部屋を強く通り抜けて、白い霊の塊もそれに流されて外へ出て行ったんだって、

 そのまま気絶して朝を迎えたんだけど、もしあのまま霊を通り抜けさせるっていうひらめきが浮かばなかったら、今頃はこの世にいないだろう、って。

 結局、自分で設置したカメラ見ても真っ暗で何も証拠は残ってないけど、結論としては色情霊の通り道、霊道だから、窓さえあけておけばいいって事で、

 その不動産屋さんが本格的に住む事になったんだけど、この話をした2ヵ月後に、やっぱり変死しちゃったらしい・・・多分、これは憶測なんだけど、

 最初に霊に犯された快感が忘れられなくて、結局、霊を部屋に引き止めちゃったんじゃないかな、で、命が危なくなったら反対側の窓を開けるっていうのを

 繰り返してたんだけど、ついに精根尽き果てて動けなくなっちゃって、そのまま命まで持ってかれちゃったのかなあって。まあ男だったら、

 そんな部屋があったら危険だってわかっていても住んじゃうかもしれないね、僕も、僕だって・・・・・自信ない・・か・・・も・・・・・」

 

その話を終えたまま、ゆっくりと、ため息をつくかのように、

蝋燭の炎を吹き消した・・・煙が女性の体のように見え、ゾクッとする。

 

「・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

あれ?4人とも黙り込んでる・・・

と、外を見るとかなり明るくなってきている!

もうちょっとで日の出かぁ、残念というか、でもちょっとホッとしたような・・・終わりを告げよう。

 

「残念だなぁ、あと5話って所でお終いかぁ、でもこれでいいと思うよ?

 確か元々、江戸時代の百物語っていうのは百話まで行くと本物が出るって怖がらせておいて、

 実際には百話まで行かない、行きそうになったら九十九話で止めるっていう様式美みたいなのが・・・」

 

と、4人が急に立ち上がった!?

そのまま朝日を迎えようかという方向へ・・・違う!

ガタガタと雨戸を閉めはじめた、朝日を遮るように、部屋を完全に暗くするために!

 

「明るいと白けちゃうからねー」

「全部閉めたらまた真っ暗になるよっ」

「日の出の正式な時刻にはまだもう少し時間がありますから」

「隙間なく閉めよ〜、そして早く再開しよ〜」

 

ガタゴトと雨戸を完全に閉め切り、

夜中にやってた時より暗くなった、それもそのはず、

蝋燭の火はあと僅か5本・・・4人の女の子も、表情に迫力が増している。

 

「最後の一巡だねー、じゃあいくよー・・・」

 

元の位置に戻って座り、

何か悪い予感をさせるかのように、炎が一斉に揺らめいた。

 

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