『閉館の時間になりました、利用者の皆さんはお帰りください、なお貸し出しを希望される方は・・・』

 

美声司書・撫子さんの声が館内に響き、午後9時になった事を知らせてくれる。

閲覧室では慌しく本を戻す人、急いで有料コピーと取る人、貸し出し手続きに入る人で慌しい。

僕はまず持ち出し・複製禁止の貴重な本を見られる特別閲覧室へ・・・

 

「もう閉館ですよー」

 

そこには背の低い、中学生もしくは下手したら小学生なんじゃないかという少女が1人残っていた。

 

「も、もうちょっとー!」

 

声も幼い感じ、覗いてみるとあきらかにやばい、今だと法律的にアウトな写真の載っているエロ雑誌が!

 

「な、何を見てるんだ、子供が!」

「はぁー?子供って、この雑誌のこと?」

「いや、その写真の子供じゃなく、き、君が・・・」

 

バックをごそごそさせ、ずいっ、と見せ付けたのは免許証だ。

 

「ほら見て、ご覧の通り36歳ですけど」

「え、ええー?嘘だあ、年齢を3倍にしてない?」

「ちゃんと受付で確認してもらったわ、なんならまたうちの実家に電話でもする?」

 

受付の伊調さん、わざわざ電話までして確認したのか、しっかりしてる・・・

 

「ええっと、36歳だよね?」

「何なら下の毛でも見る?」

「い、いや・・・ええっと、じゃ、じゃあ、そろそろ閉館なのでほどほどに・・・」

 

あまりの発言に恥ずかしくなって逃げる僕。

し、下の毛って・・・で、でも中学生だったら普通に生えてるよな?

そういう問題じゃないか、こっちは後にして他の閲覧室を見て回ろう。

 

「3階のキッズルーム・・・さすがにもういないよな?」

 

・・・いた!

しかもぐっすり寝ている・・・

うちのバイトで主にキッズルームで子供の世話をしている、桔梗かえでさんだ。

 

「桔梗さん、桔梗さーん」

「ん・・・もうパパ帰ってきたの?」

「僕はパパじゃないですよ、それに桔梗さんは・・・い、いえ」

 

離婚したばかりだった、余計なこと言いそうになった。

 

「ん〜・・・もうちょっと寝させて〜」

「しょうがないですね、ちゃんと片付けしてくださいよ?」

「・・・ZZZzzz・・・」

 

あーあまた寝ちゃった、

しかも黒いストッキングを履いた足でボリボリ掻いて・・・

爪が引っかかって穴が開いたりしなきゃいいけど・・・ま、閲覧者がいないなら、とりあえず、いいか。

 

「次は喫煙所をチェックしよう」

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