2005年4月24日掲載
『列車まかせの旅』第16弾(2003年9月13日)


第3部:「ちょっとこだわりの列車」その19/
    快速『とっとりライナー』(キハ58系編成)

 次の目標列車は、米子←→鳥取間を結ぶ快速『とっとりライナー』です。なぜ本列車をこだわりに
選んだかは前パートでも少し書きましたが、同快速が国鉄時代に製造された旧式なキハ58系急行型
気動車で編成された列車であり、それが次のダイヤ改正で新型車両に置き換えられてしまう事になっ
てしまったため、その前に記念乗車しに来た次第です。

 古い車両が老朽化や速達性向上を理由に新型車両に置き換えられて行くのは致し方ない事ですが、
列車好きからすると実に悲しい事です。

 さてと、まずは米子まで戻らねばなりません。特急『スーパーくにびき3号』で、いま来たばかり
のルートを引き返す。このまったく無駄な行程こそが、我が「列車まかせの旅」の神髄とも言えるの
です。(^^;

 大田市駅に引き返した私は改札が改札を入ろうとすると、そこには何とも小さな自動改札機みたい
な物があり、どうやらそれに切符を通すようです。

 切符を通すと反対側から切符が出てきましたが、どう見ても磁気式の自動改札機には見えないので、
たぶん切符に日付と駅名を押印するだけのスタンパーだと思います。

 ホームに降りてほどなく、大田市止めの列車が到着し
ました。乗客の少ない閑散線区用にJR西日本が配備を
進めるキハ120系一般型気動車です。「軽快気動車」
と呼ばれる簡易型の車両であり、重厚なキハ40や48
系と比べると車体寿命は短いのですが、価格が安いのが
売りなんだそうです。この時は、まだ乗った事がない車
両だったので乗りたかったのですが、以後の「旅」でJ
R西日本管内の地方線区に行くと、あちこちでこの車両
に乗る事になりました。
【島根県・大田市駅】

 ここから米子まで戻るのに乗るのは、益田発の米子行の快速『アクアライナー』3454Dです。同列
車は、まだ乗った事がない新型の一般型気動車キハ186系で編成されているので、どんな車両なの
か見るのが楽しみです。

 ホームで待っていると、『アクアライナー』が5分遅れている旨の案内放送がありました。これも
台風の影響なのでしょうか?

 定刻より5分遅れで大田市駅に到着した米子行の快速
『アクアライナー』3454Dです。これが新型のキハ18
6系ですが、角張っていて何ともシンプルなデザインの
車体ですな。
【島根県・大田市駅】

 キハ186系の外観は、新しい特急型気動車のキハ187系と同様に角張ったシンプルなデザイン
でした。このあたりがコスト・ダウンを意識した現代車両っぽい造りですな。

 シンプルな外見と異なり、車内は趣向を凝らした内装
になっていました。ボックス・シートも木を意識させる
暖かみのあるデザインでした。
【快速『アクアライナー』3454D車内】
 車両間通路の上にはLEDの案内表示器が装備されて
いました。車体側面は窓が占める面積が大きく、旧型の
キハ40/48系と比べると外光がよく入って開放的な
感じがしました。
【快速『アクアライナー』3454D車内】

 「今どき」の面白みのない外見とは逆に、キハ186の車内は、木の暖かみを感じさせるデザイン
チックなボックス・シートに加えて明るくて実に開放的な雰囲気であり私は目を見張りました。

 この手の内装はJR九州の車両でしか見た事がなかったのですが、JR西日本でもやっていたんで
すな。大阪近郊では新型の一般車両が次々と新造投入されているのですが、それらは機能面を第一と
した内装であり、特に感銘を受けるようなものではありませんでした。

 『アクアライナー』の乗車率は15%程度で座る事が出来ました。キハ186のエンジン音は、特
急型のキハ187とそっくりでした。

 それもそのはず、「モノの本」によると、両者は同じエンジンを積んでいるとの事でした。約30
分の走行で出雲市駅に到着。同駅では、そこそこの乗車があり乗車率は30%程度に増えました。ま
た、出雲市では小郡に向かう特急『スーパーおき5号』との交換がありました。

 さらに20分走って宍道に到着。同駅では、側線に備後落合の行先表示を掲げた木次線のキハ12
0が留置されていました。

 スイッチバックで有名な木次線は、いずれ「スイッチバッカーへの道」シリーズで訪れたいと思っ
ている路線です。

 その後、『アクアライナー』は停車駅ごとに徐々に乗客を増やしながら15:29に松江に到着しまし
た。同駅に着くと3分の2の乗客が降りていきました。

 松江では9分間停車し、後から追いかけて来た出雲市発・岡山行の特急『スーパーやくも22号』
を先行させました。

 松江を出て20分で終点の米子に到着しました。大田市からは1時間50分の乗車でした。けっこ
う遠かったですな。

 米子到着時に撮ったキハ186系の車内の様子です。
国鉄型の旧式車と比べると開放的で暖かみを感じる雰囲
気です。
【快速『アクアライナー』3454D車内】
 米子駅のホームからは、構内に多数のキハ40/48
系一般型気動車が留置されているのが見えました。同駅
は、山陰における気動車の一大基地でもあるのです。
【鳥取県・米子駅】
 上の写真から鳥取方に目を移すと、そこには急行『だ
いせん』が留置されていました。今晩、大阪へ向けて出
発するまで休憩中と言ったところです。
【鳥取県・米子駅】

 米子は旅行記第11弾で一度訪れていますが、その時はホーム上で急行『だいせん』から特急『ス
ーパーおき1号』に乗り継いだだけで構内から外には出ていませんから、降りるのは、今回が初めて
です。

 米子駅です。山陰本線の主要駅であり、境港線の起終
点でもあります。特急『スーパーおき』、『スーパーく
にびき』は同駅を起終点としています。
【鳥取県・米子駅】
 駅前では、何やら阪神タイガースの応援イヴェントら
しきものが催されていました。この辺りは広島の方が近
いのでカープ・ファンの方が多いのではないかと勝手に
想像していたのですが・・・。
【鳥取県・米子駅】

 次に乗る鳥取行の快速『とっとりライナー』まで1時間近くインターヴァルがあったので、私は米
子駅周辺を回って見る事にしました。ホームからは車両基地が見えたので、それを見に行ってみまし
ょう。

 米子駅より西方にある跨線橋からは車両基地が見てと
れました。そこには多数のディーゼル機関車や、キハ5
8系、キハ40/48系などの気動車が留置されていま
した。しかしながら、次のダイヤ改正で、これらの国鉄
型の気動車両は、ディーゼル機関車を除いてすべて新型
に置き換えられてしまうのです。
【鳥取県・米子市】
 跨線橋を南へと下り、車両基地の敷地に近づいて見る
と、何とそこにはディーゼル機関車に混じってジョイフ
ル・トレインの『ふれあいSUN-IN』が留置されていまし
た。同車はキハ58を改造したイヴェント用列車です。
【鳥取県・米子市】
 跨線橋の近くにあった「JR園芸の店」です。こんな
商売まで手がけていたんですなぁ。
【鳥取県・米子市】

 うるついている内に時間も迫って来たので私は駅に戻りました。駅に戻って間もなく、快速『とっ
とりライナー』が入線して来ました。

 米子駅に到着する快速『とっとりライナー』3234Dで
す。ファン垂涎の国鉄色塗装キハ58系で編成された列
車です。
【鳥取県・米子駅】
 乗降ドアが車端にあるのが急行型の特徴です。このスナップは記
録用に撮ってみただけです。(^^;
【鳥取県・米子駅】
 「モノの本」によりますと、この1000番台の車両は、
キハ58系の中でも1968年から1969年に掛けて製造され
た第3グループに属するものなんだそうです。
【鳥取県・鳥取駅】
 車両の端から端までボックス・シートがずらりと並ん
だレイアウト。これこそがオリジナルのキハ58系なの
です。
【快速『とっとりライナー』3234D車内】
 急行型の特徴であるデッキ・ドアも健在でした。私はマニアの域
には達していないので細かい違いまでは分かりませんが、パっと見
で、このキハ58はオリジナルの状態を保った車両のように見えま
した。
【快速『とっとりライナー』3234D車内】
 窓は上に押し上げるタイプの2分割式。テーブル、灰皿も、ちゃ
んと元のまま備えられていました。
【快速『とっとりライナー』3234D車内】

 キハ58系には、旅行記第12弾での小浜線と第13弾での急行『つやま』で乗りましたが、小浜
線に使われていた車両はデッキ・ドアが取り外され、ドア付近の座席もロング・シートに換えられて
いた改装車でしたし、急行『つやま』の車両では、座席がすべてリクライニング・シートに換えられ
ており、いずれもオリジナルのキハ58ではありませんでした。

 今回乗った車両は、ざっと見たところではオリジナルのキハ58に見えました。ようやくオリジナ
ルの車両に乗る事が出来たわけですな。

 米子17:01発の鳥取行・快速『とっとりライナー』3234Dは、接続列車待ちで約1分遅れて米子駅を
出発しました。乗車率は30%と言うところでした。

 発車してほどなく、運転台の後ろに立つ男性の姿がありました。やはりキハ58を見納めに来た鉄
道ファンでしょうか?

 米子から6分走って最初の停車駅となる伯耆大山に停車。同駅は岡山へと延びる伯備線との分岐駅
です。伯耆大山を出たところで検札がありました。

 列車は、次に停車する赤碕まで一気に6駅を通過します。キハ58は快調に飛ばしていました。た
ぶん、かつて「本業」の急行として走っていた頃は、このような調子の走りを見せてくれていたので
しょうな。

 本旅行記の時点で急行として走っているキハ58は『つやま』と『みよし』のわずか2本のみ、し
かもこの記事を書いている時点では『つやま』の車両は、すでに一般型のキハ47系に置き換えられ
てしまい、もはやキハ58の急行は『みよし』1本だけになっていました。

 車体は一般型と同じながら特急型のようなデッキを持ち、座席は一般車と同じ座席を備える「急行
型」と呼ばれる車両は現在では種別自体が消滅してしまっており、もはや復活する事も無いでしょう。

 現在残っている急行型の電車や気動車のほとんどは普通列車としての運用に就いていますが、それ
らも徐々に新型の車両へと置き換えられて姿を消して行くでしょう。寂しい限りです。

 そんな感慨に耽りながら外の景色をぼんやりと眺めていると、ダイヤ改正の案内放送がありました。
その中には「新型車両の投入によるサービスの向上」みたいな「くだり」があったような気がします。

 赤碕のひとつ手前の中山口駅を通過した辺りの沿線の田んぼでは、通過する『とっとりライナー』
の写真を撮る人の姿が見えました。

 17:31に赤碕駅に到着。ここから先は停車駅が増えるので、もう急行のような走りっぷりを見る事
は出来ないでしょう。

 次に停車した浦安駅では、米子に向かう『とっとりライナー』3431Dと交換しました。どうも『と
っとりライナー』は国鉄色のキハ58で揃えられているような気がします。

 由良駅の停車を経て、『とっとりライナー』3234Dは、17:54に倉吉駅に到着しました。残念ながら
行程の都合で私はここで下車します。

 列車は、あと47分走って鳥取まで行きます。本来ならばこだわりの列車には終点まで乗るところ
なのですが・・・。

 ともあれ、これで山陰方面の国鉄型車両で編成された一般列車は乗り納めとなってしまいます。次
に来た時には、真新しい特急型のキハ187や一般型のキハ186、キハ120などの姿しか見られ
なくなっている事でしょう・・・。

 倉吉駅です。山陰本線の主要駅のひとつで、特急『ス
ーパーはくと』の始発駅である他、特急『スーパーくに
びき』も停車します。
【鳥取県・倉吉駅】


第4部:「ちょっとこだわりの列車」その20/特急『スーパーはくと12号』

 倉吉からは、本日最後の目標列車である特急『スーパーはくと12号』に乗ります。『スーパーは
くと』は、京都←→倉吉間を結ぶ特急であり、JRではなく第三セクターの智頭急行が運行する列車
です。

 同列車は日に6往復が運行されており、長距離列車が飛行機に押されている、このご時世で、逆に
大阪←→鳥取間の航空路線を休止に追いやったと言う、「列車派」としては勲章でも授与したくなる
ような頼もしい特急なのです。

 特急『スーパーはくと12号』の特急券です。大阪を
通る列車なのに、わざわざ終点の京都まで買っていると
ころがミソなのです。(^^;
 倉吉駅に停車中の特急『スーパーはくと12号』です
。智頭急行のHOT7000系・特急型気動車で編成された列
車で、その存在感あるフロント・マスクは大阪近郊の駅
でも異彩を放っています。
【鳥取県・倉吉駅】
 HOT7000系の乗降口のドアは、初めて見る「プラグ・
イン」と呼ばれるタイプでした。
【鳥取県・倉吉駅】
 車内の様子です。最近の特急型車両が得意とする間接
照明といい、新型特急然とした内装でした。
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】
 シートは、JRのキハ187系よりは背もたれが「厚め」のタイ
プでした。
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】
 新型車ですが、やはり気動車得意の「足下ダクト」が
ありました。うーむ。
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】

 窓はスモーク仕様になっており外から中は見えにくいようになっていました。JRの車両では見た
事がない配慮です。

 私と同じ指定席車両に倉吉乗った乗客は僅か数人で、車内はガラガラだったのですが、なぜか私と
同列に女性が座っていました。

 『スーパーはくと12号』は、定刻の18:23に倉吉駅を出発しました。発車して間もなく女性アテ
ンダントによる検札がありました。このアテンダントは智頭急行の職員なのかな?

 約40分走って鳥取に到着。同駅では我が車両に20人ほどが乗り込んで来ました。鳥取を出てし
ばらくすると車内販売が現れました。車販は二人がペアで行っていました。

 10分で次の郡家駅に停車。ホーム長の都合なのでしょうか、同駅では後尾1両のドアが開かない
旨の案内放送がありました。

 ふと見ると、客室出入口の上にあるLED表示器では観光案内が流されていました。そのような使
い方をしているのは初めて見ました。

 19:35に智頭駅に到着。同駅では親子連れが乗って来ました。また、対面のホームには倉吉に向か
う『スーパーはくと9号』の姿が見えました。

 さあ、ここからいよいよ『スーパーはくと』のホーム路線である智頭急行線に入ります。

 しょーもない事なんですが、倉吉で降りた際に駅前の
自販機で買った我が愛飲の缶コーヒー『ジョージア/テ
イスティ』です。(^^;(ま、お約束って事で・・・)
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】

 智頭急行線に入った列車は水を得た魚のように快調に飛ばし始めました。特急『いなば1号』のキ
ハ181系と違い、HOT7000系は曲線通過速度の高い振り子式車両なので、高規格の智頭急行線でこ
そ、その威力を存分に発揮出来るのです。

 これにより、1時間前を先行している特急『いなば6号』が智頭→上郡間を走破するのに44分掛
かっているところを『スーパーはくと12号』は37分で走り抜けているのです。

 たかが7分差と侮る無かれ、智頭←→上郡間の距離は56.1キロですから、平均走行スピードは
『いなば』の76.8キロに対して『スーパーはくと』は90.5キロと14キロ近い速度差がある
のです。これこそが振り子式の威力なのです。

 事実、ダイヤ改正で『いなば』の車両が古いキハ181系から最新鋭の振り子式車両キハ187系
に置き換えられると、『スーパーはくと12号』の所要時間37分に対して先行の『スーパーいなば
8号』は40分とその差は縮まり、『スーパーいなば』の2号や4号などは38分で走るようになっ
たのです。

 智頭急行線中で大原、佐用と停車した後、『スーパーはくと12号』は上郡から山陽本線に入りま
した。

 20:37に姫路駅に到着。同駅では我が車両から4人が降りました。ふと見ると、右手のホームには
米原行の新快速が停まっていました。山陰路と列車の顔ぶれが変わったのを見ると、いかにも帰って
来た気がします。

 明石では、さらに3人が降りました。次に停車した三ノ宮では何と3人が乗って来ました。おいお
い、ここから先なら何処へ行くにしたって新快速と大して時間は変わりゃせんのに、何でわざわざ特
急なんかに乗るんだ?

 三ノ宮から18分走った21:36に大阪駅の9番ホームに到着しました。ここで乗客は、あらかた降
りてしまい、残りは私を入れてもたったの二人になってしまいました。

 大阪駅では、左の10番ホームに、旅行記第5弾で乗
った急行『ちくま』が停まっているのが見えました。残
念ながら同列車は、この記事を書いている時点では臨時
列車に格下げされており、今では姿を見る事が出来なく
なってしまいました。
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】

 次に停車した新大阪で、もうひとりの乗客も降りてしまい、車内は、とうとう私ひとりになってし
まいました。寂しい・・・。

 ふと振り返ると、後ろのデッキとの隔壁にはモニター
が埋め込まれており、その画面では列車前方のライヴ映
像が流されていました。このモニタは倉吉向きの壁にし
か無いので、京都向きでは体を逆に向けないと見る事が
出来ません。
【智頭急行・特急『スーパーはくと12号』車内】

 列車の走行音以外は何も聞こえない車内にひとりポツンと乗り、車窓から暗い外を眺めていると、
向日町の車両基地の横を通過している時に夜行の急行『だいせん』や『きたぐに』の編成が明かりを
灯けてスタンバイしているのが見えました。

 そして倉吉を出てから3時間41分後の22:04、特急『スーパーはくと12号』は、終点の京都駅
に到着しました。

 今回は、噂に聞いていた智頭急行線での『スーパーはくと』の「走り」を体感する事が出来たので、
ひとまず満足です。

 さーてと、そんじゃ今来たルートを引き返して家に帰りましょう。本旅行記の「旅」は、まだ半分
しか終わっていないのです。明日の後半パートに備えて少しは休んでおきましょう。

 京都駅に停車中の網干行・新快速3261Mです。そんで
は大阪まで帰りましょう。(^^;
【京都府・京都駅】

 第5部につづく・・・。


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