北海道には、これまでに旅行記第3弾で函館に、第9弾で木古内に足跡を印してはいましたが、い
ずれも北海道の玄関先に足を踏み入れた程度に過ぎず、今回の「旅」こそが本格的な北海道ツアーの
第1弾と言えるのです。
今回の行程は、まず東京まで移動したのち寝台特急『北斗星1号』で札幌へ。翌日、札幌に着いた
ら札沼線の普通列車で石狩当別まで往復。再び札幌に戻ったら札幌ラーメンで昼食。その後は、たっ
ぷり時間を掛けて市内散策をします。
夕方まで市内散策してから特急『ライラック19号』で滝川へ。この日は滝川のビジネス・ホテル
に宿泊します。
3日目は、まず函館本線の普通列車で滝川←→深川間を往復。滝川に戻ったら根室本線の普通列車
で釧路へ。釧路から釧網本線の普通列車で釧路湿原駅へ移動し細岡展望台から釧路湿原を眺めます。
再び釧路に戻ったら夜行列車の発車時間まで釧路市内を散策します。釧路からは夜行特急『まりも』
に乗って札幌へ向かいます。
翌日の最終日は、札幌から特急『スーパー北斗2号』で函館へ。函館で時間調整を兼ねて市内散策。
函館からは特急『スーパー白鳥24号』で本州に渡り八戸へ。八戸からは東北新幹線『はやて24号』
で東京に向かいます。
鉄道ファンとしては、こだわり甲斐のある優等列車が目白押しの行程ですが、実は、この「旅」の
主役は、それら優等列車群ではなく何と1本のドン行列車だったのです。
そのドン行列車とは、滝川から根室本線を走り釧路まで行く普通2429Dです。実は、この列車は日
本で最長の運行時間(7時間45分)を誇る列車なのです。
日本最長運行列車については、旅行記第6弾で書いたように飯田線の普通544Mがその列車と思
い込んでいたのですが、その記事を読んで下さったHOFUさんから根室本線の2429Dこそがその列車で
ある事を教えて頂き私の思い違いが発覚したのでした。(^^;
その事を知ってから同列車にずっと乗りたいと思い続けていたのですが、ついにその願いを叶える
時が来たのです。
つまり、この1泊4日の大掛かりな「旅」は、普通2429Dに乗るために企画したと言っても過言で
はないのです。
今回、『北斗星1号』の切符はJRの5489ダイヤルに電話して買ったのですが、その際、ディ
ナーを予約するかどうか尋ねられました。
同列車には国内の定期列車で唯一となった食堂車が連結されているのですが、夕食については事前
予約制になっているのです。メニューはフランス料理のコース(7,800円)と懐石御膳(5,500円)の
2種類のみです。
一度は賞味したいものですが、何だかラフな格好では行きにくそうだし、ひとりで利用するのもつ
まらないので今回はやめておく事にしました。
そして出発当日の7月6日(火曜日)、午前中はのんびりとしてから私は大阪駅へと向かいました。
朝のニュースによると大阪の気温は33度。あっち(北海道)は、いったい何度ぐらいなんでしょう
かね?
新大阪駅から出て行く野洲行・普通754Tです。加 古川始発の普通列車であり、車両は近郊型の221系が 使用されていました。 【大阪府・新大阪駅】 |
テロ警戒のためか新大阪駅には警備員の姿が多く見られ、新幹線のホームで待っていると私の荷物
にも視線を配りながら警備員が通り過ぎて行きました。
ホームの様子を見ると、3両しかない『のぞみ号』の自由席に座るべく発車時刻の25分以上前か
ら並んでいる人々がいました。
「のぞみ」の場合、自由席と指定席では運賃が810円も変わりますから、優に駅弁1個買える分
のお金が浮くわけです。そら30分並ぶだけの値打ちはありますわな。
新大阪駅に入線する当駅始発・東京行の『のぞみ12 8号』です。車両は700系でした。 【大阪府・新大阪駅】 |
自由席に並ぶ人々を横目に見ながら私は指定席の7号車に乗りました。定刻の13:30、我が7号車
は30%程度の乗車率で『のぞみ128号』は新大阪駅から発車しました。今日の混み具合なら自由
席でも座れたかも知れませんな。
列車が名古屋に着くと我が列の通路側席の乗客が現れました。同駅を出ると、名古屋から乗って来
た母子連れの子供が泣き叫び出し、あやしても泣き止まないため母親が子供を連れてデッキへ出て行
きました。お母さんは大変ですなぁ。
新大阪ではあちこちに警備員の姿を見掛けましたが「のぞみ」の車内でも制服の警官が巡回してい
ました。実に物々しい警備体制ですが列車テロの情報でもあったのでしょうか・・・?
その後は、特に何事も無く『のぞみ128号』は16:06に終点の東京駅に着きました。さて、それ
では上野へ向かいましょう。
上野駅から発車して行く京浜東北線の南浦和行です。 お馴染みの209系です。 【東京都・上野駅】 |
第1部:「夜行列車愛好家への道」その17/寝台特急『北斗星1号』 |
今回、北海道へのアクセスには上野発・札幌行の寝台特急『北斗星1号』に乗ります。『北斗星』
は、寝台特急が衰退して行く昨今において1日2往復体制を維持している人気列車です。
同列車には、A寝台個室ロイヤル、A寝台個室ツイン・デラックス、B寝台個室ソロ、B寝台個室
デュエット、開放型B寝台と多彩な寝台が用意されており、さらに定期列車の中では唯一、食堂車を
連結しています。
『北斗星』は定期運行列車の中では日本最高の設備を備える列車であり個人的に憧れていた列車の
ひとつでした。いよいよそれに乗る事が出来るのです。
ちなみに、個人的に日本最高の車内設備を備える列車と考えているのは大阪←→札幌間を走る臨時
運行の寝台特急『トワイライトエクスプレス』です。
寝台特急『北斗星1号』の上野→札幌の特急券・B寝 台個室ソロ券です。本当は最高グレードの個室であるA 寝台個室ロイヤル(寝台料金17,180円)に乗りたかった のですが同室は人気が高く、すでに満席でした。 |
京浜東北線の列車から降りた私は、車内で食べる夕食用の駅弁を買うと『北斗星1号』が出る13
番ホームに向かいました。見ると列車はすでに入線していました。
上野駅13番ホームの列車案内板に表示される『北斗 星1号』の案内表示です。東京にある駅で札幌行の文字 が見られるのは、ここ上野だけです。 【東京都・上野駅】 |
上野駅に停車中の寝台特急『北斗星1号』です。24 系の寝台型客車11両編成です。 【東京都・上野駅】 |
車体側面には列車のエンブレムが誇らしげに付けられ ていました。このようなエンブレムを付けている寝台車 は『北斗星』用の車両のみです。寝台特急の中でも、こ の列車が別格である事を表しているかのようです。 【東京都・上野駅】 |
『北斗星1号』のB寝台個室ソロ車の通路です。右側に個室のド アがずらりと並んでいます。本車両の寝台は2階建てになっており 1階と2階のドアが交互に並んでいます。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
今回の私の寝台は2階でした。ドアを開けると階段があり、その 上が個室になっていました。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
寝台の窓側です。跳ね上げ式の肘掛けがありました。 座席として座る場合は肘掛けと窓の間に座ります。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
窓付近の様子です。線路方向に寝台が向いていた寝台 特急『なは』のB個室よりは窓が小さいものの、個人的 にはこれでも十分です。窓の左下のパネルはオーディオ ・サーヴィスの操作パネル、その右下は室内照明と暖房 の操作パネル、そのまた右にテーブル、その下には国鉄 タイプの灰皿がありました。窓の上にあるスイッチは非 常通報用です。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
足元の様子です。奥の茶色の箱は暖房用の送気口?その右手前に はゴミ箱。画像左手前隅に写っている茶色の小箱は足下灯です。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
ベッドの足元側です。ベッドの上には掛け布団、枕、 浴衣、ハンガーが置かれています。左側には階段があり 寝ている時に落ちないようにベッド横には転落防止柵が 装備されています。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
ドアの上には荷物置き場があります。大型の旅行カバ ンが置けるぐらいのスペースがあります。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
『北斗星1号』は定刻の16:50に上野駅から発車しました。残念ながら私の個室のベッドは座った
状態だと後ろ向きに走る方向です。
出発後の案内放送によると個室の鍵は検札の際に渡すとの事でした。客車の車窓から眺めると、ス
テンレス製ボディの通勤型電車が行き交う東京近郊路線は、まるで別世界のように見えてしまいます。
たぶん、沿線や駅のホームから見ても寝台列車は異様な存在に見えるでしょうな。
発車して間もなく、京浜東北線の大宮行と同速度でし ばらく併走しました。あちらの乗客は、平日の通勤時間 帯に寝台特急に乗っている乗客を何と思っているでしょ うか・・・? 【寝台特急『北斗星1号』の車窓より】 |
さらに続く案内放送では、食堂車は予約のみで1回目のディナー・タイムを始める事、浴衣での利
用は遠慮するようにとの事でした。何せおフランス料理ですからな。
上野から26分で最初の停車駅である大宮に到着。同駅を出て17:33頃にようやく検札が来て部屋
の鍵を渡されました。
B寝台個室ソロの鍵です。皮製のキー・ホルダーには 「4 SOLO」の文字と北斗星のマークが形押しされ ています。このキー・ホルダーはグッズとして車内で販 売されていると聞いています。これまで乗った個室寝台 はカード・キーか暗証ボタン・キーだったので鍵タイプ は、これが初めてです。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
検札が済んだところで私は浴衣に着替えてくつろぎました。車掌は各部屋を丁寧にノックしていま
したが、このソロ車に何人の乗客がいるのいかはわかりませんでした。
大宮から約1時間、宇都宮に到着する少し前に車内販売が声を張り上げて登場しました。開放型B
寝台と違って個室は声を出さないと中に聞こえませんからな。
我が6号車のデッキ・ドアは自動ドアだったのですが、車両の半分がロビーになっているためかひ
っきりなしに人の出入がありました。
18:08、早くも車販弁当が売り切れた旨の放送がありました。ディナーを予約している人は別とし
て、夜行列車に乗るのに予め食料を調達しておかない人って結構いるんだなぁ。
宇都宮のホームでは、そこそこの人数が『北斗星』を待っていました。同駅を出たところで私はベ
ッドに横になりコーヒー・タイムにしました。
試しにオーディオ・サーヴィスのパネルをいじってみると、1チャンネルはポピュラーのインスト
ゥルメンタル、2チャンネルは洋楽、3チャンネルはテープが延びたような音で何だか不明、4チャ
ンネルはクラシックでした。
再び車販がやって来ましたが、壁越しに聞いているとコーヒーを買い求める人が多くいました。車
販コーヒーは、たぶんレギュラーでイケるんでしょう。
18:45、早くも最後の車販。放送によるとサンドイッチもすでに売り切れたのとの事。寝台特急の
車販は、どの列車でも売り上げが芳しくないと聞いているのですが、『北斗星』の車販は好調なよう
ですな。
壁越しに聞いていると、おばちゃん達が頻繁に行き来していました。おそらく寝台列車に乗るのが
初めてで物珍しいんでしょう。
間もなく郡山に着く19:10、ディナー・タイム2回目の案内放送がありました。それから3分で郡
山駅に到着。同駅では隣のホームに元急行型の455系電車が停まっているのが見えました。乗りて
ぇなぁ・・・。
郡山を出てから通路を通りがかったオバさん曰く、「船より揺れるんじゃない?」との事。ゆっく
り揺れる船とは揺れかたが違うと思うのだが・・・。
19:52、福島に到着。ホームに人影はありませんでしたが、通勤客は別のホームにいるようです。
同駅には福島←→槻木間を結ぶ第3セクター鉄道・阿武隈急行の列車が停まっていました。
福島を出たところで晩飯にしました。
上野で買っておいた駅弁『東北味まつり』です。メニューは、海 と山の幸ご飯(蒸しウニ、三陸産イクラ、シジミ山椒の佃煮、山菜 醤油煮が載ったご飯)、陸奥湾産帆立旨煮、ハタハタ一夜干し、豚 肉の仙台味噌漬焼き、にんにくチップ、ぜんまい煮、仙台麩旨煮、 田舎煮(舞茸、山形たまこん、里芋、にしん、筍、絹さや)、蟹爪 さつま揚げ、ずんだもち。まさに東北の味が詰め込まれた豪華な駅 弁です。 【寝台特急『北斗星1号』車内】 |
20:58、仙台を出たところで早くも放送休止の案内がありました。その放送では青函トンネルの通
過は2:58頃になるとの事。
放送休止になったところで私も寝る事にしました。『北斗星』が走る東北本線は、かつて寝台特急
『はくつる』で2度往来しているので、今さら目新しい事もありません。
あの時と変わったところと言えば、東北新幹線の盛岡←→八戸間が延伸開業した事により、並行す
る東北本線の同区間が第3セクターのIGRいわて銀河鉄道(盛岡←→目時間)と青い森鉄道(目時
←→八戸間)に移管された事ですが、『北斗星』は昔と変わらず同区間を通って運行されているので
乗っている分には何も変化は感じません。(3セク路線に乗り入れる分、運賃は多少上がったようで
すが・・・)
余談ですが、東北新幹線延伸開業で『北斗星』は残ったのですが『はくつる』の方は廃止されてし
まい、貴重なブルトレが、また1本姿を消してしまったのが残念でなりません・・・。
例によって熟睡できたかどうかわからない内に、ふと目覚めた1:50頃、列車は3セク区間を通過し
て再び東北本線に入り浅虫温泉の手前に差し掛かっていました。
そして上野を出てから9時間10分経った午前2時、『北斗星1号』は青森駅に到着しました。ホ
ームに入る直前、寝台特急『カシオペア』塗装の機関車がチラっと見えました。
青森は停車駅ではないので客扱いなしの運転停車となります。旅行記第3弾で寝台特急『日本海1
号』で函館に向かう際、ここ青森で機関車を青函トンネル通過専用のED79型電気機関車に付け換
えたので、『北斗星』も同じようにするはずです。降りられないので残念ながら見には行けません。
窓から深夜の青森駅構内をぼんやり眺めていると、駅着前に見たのと同じ『カシオペア』塗装の機
関車が目の前を横切って行きましたが、さっき見たやつとは別の機関車です。
そう言えば上野ではこの列車の牽引機関車を見忘れたのですが、間合い運用で『カシオペア』塗装
車が使われていたのでしょうか?
とか何とか考えを巡らせていると、夜中の2時にも関わらず通路を行き来する足音が聞こえました。
こんな時間にウロつく人々がいるとすれば、やっぱ鉄道ファンかな?
2:12、機関車を付け換えた『北斗星1号』は逆向きで青森から発車しました。これで私の寝台の座
席方向も進行向きになります。
うとうとしていると案内放送通り2:58頃に青函トンネルに入りました。トンネル通過中に私は寝込
んでいました。
気づけばすでに4時、外は、すっかり明るくなっており、車掌が函館で降りる乗客を起こして回っ
ていました。
そして4:24、列車は函館駅に到着しました。同駅では24分停車して再び機関車を付け換えます。
それでは降りて見に行きましょう。
旅行記第3弾以来、2年ぶりに函館駅のホームに降り立つと、「さぶっ!」。なんだこの気温
の低さは?・・・て、言うか前回来た時も7月でこんな気温やったな。(^^;
函館から札幌までは非電化の路線となるため、『北斗 星』塗装のDD51型ディーゼル機関車が重連(2両) で『北斗星1号』を牽引します。機関車2両で牽引する のは、一定の速度を維持するのに1両では馬力が不足す るからだそうです。 【北海道・函館駅】 |
ふと左隣のプラットフォームを見ると、何と寝台特急 『カシオペア』が停まっていました。不定期運行の同列 車は『北斗星1号』より30分早く上野を出発していた のです。 【北海道・函館駅】 |
我が『北斗星1号』と同じく札幌を目指す『カシオペア』との会合は予期していませんでした。も
っとも、時刻表をちゃんと見ていれば予めわかっていた事ですが・・・。(^^;
『カシオペア』は、JR発足後に唯一製造された新鋭客車E26系で編成された不定期寝台特急で、
かつて3往復運行されていた『北斗星』の1往復と置き換えで上野←→札幌間で運行されています。
寝台の種類はA寝台個室カシオペア・スイートと、同じくA寝台個室カシオペア・ツインのいずれ
も2人用個室2種類のみ。つまりこの『カシオペア』は、カップルや夫婦など2人連れ旅行者の利用
を前提とした列車なのです。
もちろん乗ってみたい列車なのですが、何と2名からしか寝台券が発売されないため、鉄道ファン
がひとりで利用するには、いささか気兼ねしてしまう列車なのです。
その『カシオペア』を眺めていると、発車間際に列車をバックに車掌に写真を撮って貰っているオ
バさんたちが見えました。それから間もなく同列車は札幌に向けて先に発車して行きました。
函館駅構内の留置線には、多数の電車や気動車に混じ って50系客車が留置されていましたが車体側面中央に 「防災代用車両」と描かれていました。 【青森県・函館駅】 |
『北斗星1号』の編成反対側に行って見ると、青森か らここまで列車を牽引して来たED79型電気機関車が 編成から切り離されて停まっていました。 【青森県・函館駅】 |
ふとホームを見渡すと、列車から降りて写真を撮っていたのは、私以外にはひとりしかいませんで
した。ま、今日は平日の水曜日ですからな。
『カシオペア』から遅れること17分、我が『北斗星1号』も函館を後にしました。このあと、ほ
ぼ2時間後には続行する『北斗星3号』が函館に着くはずです。
部屋に戻る前に洗面所に立ち寄ると蛇口からはお湯が出ました。寒さが厳しい冬場は大変ありがた
いでしょうな。
さあ、ここからは未踏の函館本線に入ります。同線は七飯から大沼までは西ルート(渡島大野、仁
山経由)と東ルート(直通)の二手に分かれ、その先の大沼←→森間も、大沼公園、駒ケ岳経由のメ
イン・ルートと、渡島砂原経由の通称「砂原線」に分かれています。
『北斗星1号』は七飯から東ルート、大沼からメイン・ルートを通り5:35に森駅に停車しました。
さらに八雲に途中停車したのち、6:29に長万部に到着しました。
長万部からは先は室蘭本線に入ります。函館本線の方は、ここから小樽方面へと向かいますが、山
間部でスピードが出せないため、函館←→札幌間を結ぶ優等列車は、すべて海側を走る室蘭本線を経
由しています。
長万部を出たところで車販が再開されました。6:38、食堂車の準備が出来た旨の案内放送がありま
した。朝食は予約不要ですが数に限りがあるとの事です。
洞爺、伊達紋別に停車し、7:39に東室蘭に停車。室蘭本線のネーム・シティである室蘭には、同駅
で普通列車に乗り換えて行く事になります。
室蘭は北海道を代表する都市のひとつですが、室蘭本線は同都市を経由しておらず、東室蘭から支
線のような形で路線が延びています。
函館←→札幌間を結ぶ優等列車は東室蘭には停まるものの室蘭は経由しておらず、乗り入れている
優等列車は、札幌との間を結ぶ1日5往復の特急『すずらん』のみで、それ以外は室蘭←→東室蘭間
の区間普通列車があるのみで、まるで支線のような扱いになっていました。
東室蘭の次、鷲別を過ぎたところで右手に太平洋が見えました。7:44、ロビーにて『北斗星』グッ
ズの販売を行うとの事。記念に何か買いたかったのですが、結局、行きませんでした。
次の停車駅である登別を出て5分後の8:00にグッズ販売終了の放送。錦岡を通過した辺りで太平洋
と別れを告げ、8:24に苫小牧に停車。
苫小牧を出て数分後に食堂車ラスト・オーダーの案内があり、時を同じくして個室の鍵が回収され
ました。札幌までは、もう1時間も掛かりません。
最後の停車駅である南千歳を出て間もなく車内サーヴィス終了の案内放送。それから30分と経た
ずに札幌の市街地に入り、9:18、何の放送もないまま『北斗星1号』は終点の札幌に到着しました。
上野から16時間28分の乗車でした。
札幌駅に到着した寝台特急『北斗星1号』です。旅行 記を始めて以来、同列車に乗って札幌に降り立つのが大 きな目標のひとつでした。 【北海道・札幌駅】 |
せっかく札幌に着いたところなんですが、37分後に出る札沼線の普通列車に乗って石狩当別に向
かいます。
いささか睡眠不足の私は東口改札からいったん外へ出ると北口のロッカーに荷物を預けました。気
温は大阪より7度も低く少々肌寒く感じました。
札幌駅です。同駅を通る路線は函館本線だけですが、千歳線列車 も同駅を経由しており、札沼線列車もここを起終点としています。 また、宗谷本線、石北本線、石勝線/根室本線の特急列車も、ここ を起終点としています。駅の上にそびえ立つのはJRタワー・ホテ ル日航札幌です。 【北海道・札幌駅】 |
第2部:「ちょっとこだわりの列車」その37/JR・キハ143形 |
さて、次に乗る札沼線ですが、乗る目的は路線乗り潰しではなく同線を走るキハ143形気動車で
した。この車両は余剰となった50系一般型客車にエンジンを搭載し運転台を設けて気動車化したリ
サイクル車両なのです。
客車改造の気動車は、JR北海道のキハ141、142、143形(この3形式は準同型車)とJ
R西日本のキハ33形しかなく、数も少ない珍しい車両なのです。
札幌駅の券売機で買った札幌→石狩当別の近距離切符 です。 |
目的地を石狩当別としたのは目的の列車が同駅行だったからです。札沼線の末端は新十津川ですが、
同線の大部分の列車は石狩当別の次の北海道医療大学駅までで、そこから先、新十津川まで行く列車
は1日にわずか3往復しかなく、今回の行程では往復するのは困難でした。
切符を買って列車が出る10番ホームに上がって見ると、そこには9:41発の網走行・特急『オホー
ツク3号』が停まっていました。
『オホーツク』に使用されているキハ183系特急型気動車もそうですが、JR北海道の車両を直
に目にするのは、これが初めてであり目移りしてしまいます。
『オホーツク3号』が出た後、ホームで9:55発の石狩当別行を待っていると、いつの間にか私の後
ろに列が出来ていました。
9:44、北海道医療大学発の札沼線列車が到着しましたが何と5両もの「長大編成」でした。ローカ
ル線の気動車普通列車で5両編成は、これまで見た事がありません。
到着した列車は後ろ2両が切り離され3両編成となりました。乗車位置に並んでいた私は先頭車の
写真を撮る為に列を離れました。
札幌駅に停車中の札沼線・石狩当別行・普通553D です。客車改造のキハ143形一般型気動車です。 【北海道・札幌駅】 |
この157号車は、1993年にオハフ51客車を改造し た車両なんだそうです。車両形式名の上にある「学園都 市線」は札沼線の愛称名です。 【北海道・札幌駅】 |
キハ143形車内の様子です。座席は片側のボックス 席が2人掛けに変更され、乗降口付近はロング・シート に換装されて吊革も設置されていますが、客車時代の面 影が色濃く残っているように思えます。(もっとも、オ リジナルの50系客車の車内を私は見た事がありません が・・・(^^;) 【札沼線・石狩当別行・普通553D車内】 |
50系客車には、旅行記第9弾の快速『海峡4号』で乗りましたが、その車両の座席は転換クロス
・シートに換装されていたのでオリジナルの50系ではありませんでした。
553Dに乗り込んで車内を見渡すと、なぜか皆さん2人掛けの方に座っていました。何か意味が
あるんかいな?
列車は定刻の9:55に乗車率20%程度で札幌から発車しました。ま、平日の10時ですから、こん
なもんでしょう。
2人掛けには、すべてひとり以上が座っていたので私は4人掛けに座りました。最初の停車駅であ
る桑園では私の席にオバさんが相席しました。
同駅を出たところで列車は函館本線から右に分かれ札沼線に入りました。次の八軒でも乗車があり、
我がボックス席に3人目の乗客(女性)が座りました。
この辺りの札沼線は都市の高架線上をゆっくりと走っていました。新川、新琴似と停車し、太平に
停車。同駅で我が席のオバさんが降りて行きました。
ここら辺は、まだ札幌の都市圏内です。高架上から街を観察すると、道路は、やはり雪国独特の幅
広でした。この辺りは、いったいどのくらい雪が積もるのだろう?
太平を出たところで線路は地上に降りました。次の停車駅百合が原の最寄りには財団法人・札幌市
公園緑化協会が運営する百合が原公園があります。
同園は花の展示をメインにした総合公園で、一年じゅう花と緑が楽しめるとの事です。レストラン
もあり、園内を一周する『リリー・トレイン』なるトロッコ列車(?)も運行されています。
百合が原を後にした列車は、篠路、拓北と停車後、あいの里教育大学に着きました。同駅では学生
らしき若者達が20人ほど降り、車内は閑散となりました。
同駅の名からして「あいの里教育大学」なる学校が存在するのかと思えばそうではなく、北海道教
育大学への最寄り駅だったのです。同大学は駅から1キロほど離れていました。
さらに3分走ってあいの里公園に停車。その名の通り北西400メートルほど離れたところに、あ
いの里公園があります。
同園は比較的広い地区公園で、中央部に「トンネウス沼」と名が付いた大きな調整池を持ち、その
周囲にランニング・コース、野球場、テニス・コート、自由広場(ゲート・ボール場)などがあります。
あいの里公園駅のホームに立つ駅名標です。札沼線の 愛称名である学園都市線の名が上に冠されています。 【札沼線・石狩当別行・普通553D車内】 |
あいの里公園を出て石狩川を渡った列車は石狩太美に停車後、終点の石狩当別に到着しました。札
幌を出てから46分の乗車でした。
列車から降りてふと見ると、キハ40系単行の新十津川行が停車していました。同駅まで行く列車
は1日にわずか3本しかなく、その貴重な1本が目の前に停まっている普通5425Dなのです。
しかしながら、当時の私は、まだ全国鉄道乗覇の野望を抱いていなかったので、新十津川行にはチ
ラっと視線を向けただけで改札へと向かいました。
札沼線の石狩当別駅です。札沼線の区間運転列車には 手前のあいの里公園止めや次の北海道医療大学前止めも ありますが、半数近い列車が当駅止めとなっています。 【北海道・石狩当別駅】 |
さてと、札幌に戻る11:29発の列車まで48分ほど時間があるので少し町中を歩いてみましょう。
石狩当別については、まったく予習をして来なかったのですが、いったい何があるのでしょうか?
駅前には、これといって高いビルもなく、典型的な地方都市の風情でした。これと言って見るべき
ものも無かったのですが、印象的だったのは、各民家の玄関先に透明ハウスみたいな「控え室」が設
けられていた事です。
これはたぶん、冬期に玄関が雪で埋まっても外に出られるようにとの工夫なのでしょう。なるほど
雪国ならではの設備です。
町内をゆっくり歩いて一周した後、私は駅に戻りました。道中、コカコーラの自販機で見たことが
ない缶コーヒーを見つけたので1本買いました。
石狩当別駅に停車中の札幌行・普通556Dです。は るばる新十津川から来た列車で、キハ40系×1両、キ ハ143形×2両の3両編成でした。おそらく当駅で増 結したのでしょう。 【北海道・石狩当別駅】 |
ホームの陸橋出入口にはドアがありました。これも冬 期の保温対策のひとつなのでしょう。 【北海道・石狩当別駅】 |
今回の目的はキハ143なので、私は迷わずキハ143に乗り込みました。列車は定刻に石狩当別
駅から発車しました。乗車率は20%ほどでした。
車内でコーヒー・ブレイクにしました。石狩当別町内のコカコー ラ自販機で買った『ジョージア/サントス・プレミアム』です。北 海道限定の銘柄で、アメリカン・チックな飲みやすいコーヒーでし た。かなり前になりますが大阪でも売っていたような気がするので すが・・・。 【札沼線・札幌行・普通556D車内】 |
当時の私は、札沼線の利用率は、まったく知らなかったのですが、札幌までの道中でどんどん客が
増えて札幌に着いた時には立ち客が少しいました。昼時にこれだけ乗っていると言う事は、通勤時間
帯は、けっこう混むのでではないでしょうか?
沿線の住居群を見ると、大半の屋根に小振りな煙突が あるのに気が付きました。これは冬期に暖房器具や湯沸 かし器などの排気ガスを排出するための物なのでしょう か? 【札沼線・札幌行・普通556Dの車窓より】 |
時間は12:13。昼食には札幌ラーメンを食べるつもりでしたが、ちょうど昼時で何処の店も混んで
いるでしょうから、先に札幌観光をして13時を回ってから昼飯にしましょう。
第3部:札幌市内散策 |
さてと、まずは駅の北西400メートルほどにある北海道大学からです。大学が見所と言うのも妙
な話なんですが、旅行雑誌『るるぶ』にそう紹介してあったので、それなりに見るところはあるので
しょう。
全国の国立大でも最大の広さを誇るという敷地内に正門から入ると、そこは大学の構内と言うより
公園といった趣でした。
北海道大学の古河記念講堂です。1909年に、古河財閥 が政府に献金したお金の一部で建設されたそうです。ル ネッサンス様式の豪奢な建物です。 【北海道・札幌・北海道大学構内】 |
構内には森もあり、このような小川も流れています。 一般市民が散歩したりくつろいでいる姿も多く見られ、 まさに公園の雰囲気です。 【北海道・札幌・北海道大学構内】 |
私も仕事の関係でいくつかの大学構内に入った事がありますが、それらはいかにも学校チックで無
愛想な建物が建ち並んでいるだけといった印象でした。ここの大学は、まるで違いますな。
さらに奥へと進んでみましたが、もう見るような所もなさそうなので次の旧北海道庁舎を見に行く
事にしました。その道中で再び札幌駅付近を通ったので駅を少し観察してみました。
再び札幌駅です。改築により2003年3月に巨大な商業 施設「JRタワー」としてオープンしました。この、駅 を商業施設化すると言うプロジェクトは大成功を納めた と聞いています。 【北海道・札幌駅】 |
駅から南へ歩くこと400メートルほどで北海道庁に着きました。
北海道庁の旧庁舎です。1888年に建てられたもので赤 煉瓦造りの趣のある建物です。国の重要文化財に指定さ れていますが、今時、こんな凝った庁舎なんか建てた日 にゃ税金の無駄遣いと叩きまくられるでしょうな。ちな みに現在の庁舎は右奥にあります。 【北海道・札幌】 |
旧道庁を見た私は南へ500メートル歩いて大通公園に出ました。同公園も見所のひとつですが、
まずは沿道にある時計台を見に行きましょう。
これも札幌の名所のひとつ時計台です。1878年竣工の 旧札幌農学校演武場で国の重要文化財に指定されていま す。時計台を紹介するHPによると、明治期には札幌本 庁が火事で焼けたら本庁の仮庁舎として使われたり、裁 判所が焼けたら仮裁判所として、郵便局が焼けたら仮郵 便局として使われたりしたそうです。こういった歴史的 建築物は中に入るのでなく外から眺めるものだと思いま すな。 【北海道・札幌】 |
時計台を見た私は大通公園に戻りましたが、この長大な公園はどの辺が見所なんでしょうか? ふと
見るとテレビ塔の鉄塔が見えたので、そちらを目指して歩きました。
これまた札幌の名所、大通公園とテレビ塔です。公園 は幅70メートル、全長1.5キロほどもあります。元々 は北の官庁街と南の住宅・商業地区相互に火災の延焼を 防ぐ防火帯として造られたものなんだそうです。冬に札 幌雪まつりが開催されるので有名な公園です。 【北海道・札幌】 |
公園には大勢の人々がいました。近くの会社から昼休みで出て来ている人もいるでしょうし、観光
客もけっこういそうです。
大通公園を見たところで昼食にする事にしました。とかく食に関しては、こだわりもなんっっにも
ない私なんですが、せっかく札幌まで来たんですから本場の札幌ラーメンだけは食べませんとね。
そんでと、お目当ての札幌ラーメンなんですが、札幌にはラーメン屋が実にたくさんあります。し
かしながらラーメン通ではない私は、どこの店がおいしいのかさっぱりわかりません。
そこで、「旅」に出る前にインターネットで、とあるラーメン通の人が開設している評価HPの記
事を調べたところ、「初心者は迷ったらこの店に行け」と紹介していた店があったので、そこに行く
事にしていました。
大通公園を後にして、札幌の歓楽街として有名なすすきのの通りを歩いて目的のラーメン屋を目指
していると、なんとまぁラーメン屋の多い事。
しかしこうもラーメン屋が多いと競争も激しいようで、店によっては店頭で呼び込みをしていると
ころもありました。
そんなすすきのを通って14時過ぎに目的のラーメン屋に到着。店内に入ると客は二人しかいませ
んでした。もう昼時は、とっくに過ぎてますからな、よしよし。
注文したのは、もちろん味噌ラーメン。札幌ラーメンと言やぁやっぱ味噌ですがな。いよいよ日本
三大ラーメンのひとつを本場で味わえるとあって待っている間にも期待が膨らみます。
間もなく運ばれて来たラーメンは、ネギが山盛りに盛られ、見た目からして大阪のラーメンとは違
います。そーこなきゃねぇ。
〈ふおっ!! こ・・・これは!〉
と驚愕するような美味を期待して私は最初の麺をすすりました。
〈こ・・・、これは!・・・普通?〉
確かにおいしいのですが、びっくりするほどではないばかりか、私の中では並程度のうまさに過ぎ
ませんでした。これじゃ大阪で食うのと大して変わらんがな・・・。
食べ終えた私は落胆した気持ちで店を出ました。うーむ、私の舌がおかしのだろうか、それとも昼
時を過ぎて「ずんどう」の底の方のスープで作ったからだろうか・・・?
たった1軒だけで札幌ラーメンの実力がわかる訳ではありませんが、いずれにせよ私の初札幌ラー
メンは遺憾な結果になってしまいました。
さてと、次は何処を見に行こう。札幌駅から歩いて行ける範囲の名所は、すでに回りました。ふと
見ると近場に大きな公園が見えたので入ってみる事にしました。
そこは中島公園で、何と地下鉄ひと駅分(中島公園←→幌平橋間)もの広さを持つ広大な公園でし
た。案内図によると園内には、菖蒲池、児童会館、人形劇場こぐま座、北海道文学館、八窓庵、豊平
館、札幌コンサート・ホール「キタラ」、天文台、札幌市中島体育センター、テニス・コートなどが
あるとの事です。
公園の北口広場から入ると正面には菖蒲池があり、大小の池を縫うようにして通路が設けられてい
ました。
園内には地元と思しき人々が散歩したりベンチでくつろいでいましたが、それと同じぐらいの数の
カラスが通路やその周辺にたむろしていました。
公園に鳩がたくさんいるのは、よく見掛けますが、ここにいる鳥はカラスばかりで何とも異様な光
景です。ふつうカラスは警戒心が強くて人には近づかないはずなのに・・・。
中島公園内にある豊平館です。近くで見ると綺麗に手 入れされ比較的新しそうに見えたのですが、1880年竣工 の元ホテルで国の指定重要文化財なんだそうです。現在 はホテルとしては使われていませんが、何と結婚式場と して利用出来るそうです。重要文化財で結婚式を挙げら れたらさぞかし思い出になるでしょうな。 【北海道・札幌・中島公園】 |
なんとベンチにまでカラスがとまっていました。人を ナメているのか、かなり近づくまで逃げようとしません でした。 【北海道・札幌・中島公園】 |
中島公園もざっと見え終えましたが、時間はまだ15時前、次に乗る列車は19:30発なので、まだ
まだ時間があります。
とは言っても札幌市内で歩いて行ける観光スポットは、もう知りません。さて、どーしましょうか
ねぇ。大都市の街中っつーのは見るとこないんスよね。
そこでせっかく北海道に来ている事ですし地元のJR路線にちょい乗りする事にしました。時刻表
を広げて札幌近郊路線を調べたところ、何と有名な小樽まで30分ほどで行けるではありませんか。
そんでは小樽に行ってみましょう。
とりあえず札幌駅まで戻ります。駅から中島公園までは歩いて来たのですが、せっかくなので帰り
は札幌市営地下鉄に乗ってみましょう。
札幌市営地下鉄・南北線・中島公園駅に到着する麻生 行です。札幌市営地下鉄の5000系と呼ばれる車両で 何と鋼製の車輪ではなくタイヤで走ります。同市営地下 鉄は南北線、東豊線、東西線の3路線を持ちますが、す べてタイヤ車で統一されている全国で唯一の鉄道です。 【北海道・札幌市営地下鉄・中島公園駅】 |
中島公園を出た列車は、途中、すすきの、大通に停車してから地下鉄さっぽろ駅に着きました。そ
れでは函館本線の小樽行列車の乗り換えましょう。
それはまた次回と言う事で・・・。
第4部につづく・・・。
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