第3部:「ちょっとこだわりの路線」その9/紀州鉄道(パート2) |
紀州鉄道の廃線区間の探索を終えた私は西御坊駅に戻りました。駅には券売機が見あたらなかった
ので、係員のいる改札横の窓口で御坊駅までの乗車券を買いました。
係員の応対は実に丁寧で、私に切符を渡す時には「次の列車は13分です」と教えてくれ、大変、
好感が持てました。
西御坊→御坊間の乗車券です。最近では、ほとんどお 目に掛かれない硬券切符でした。それにしても全線乗車 しても180円とは安いですな。 |
次に乗る御坊行列車は、まだ到着していなかったので、私は駅舎内に置かれていたベンチに座って
待つ事にしました。
駅舎の中を見回して見ると、天井や壁板が所々めくれており、節電のためか蛍光灯も何本かが外さ
れていました。乗客が少ないために経営は苦しいと聞いています。大変なんですなぁ。
西御坊駅の駅舎内の様子です。手直しする費用がない のでしょうか、天井や壁板が所々めくれていました。 【和歌山県・紀州鉄道・西御坊駅】 |
節電のためでしょうか、駅舎内の蛍光灯も何本か取り 外されていました。 【和歌山県・紀州鉄道・西御坊駅】 |
ベンチで待っていると、12:05に御坊からの列車が到着しましたが、降りてきた客はいませんでし
た。事前に得ていた情報によると、御坊からの乗客は、ほとんど1駅手前の市役所前で降りるとのこ
とです。
ホームの御坊方の端には仮設トイレが置かれていました。これが 駅のトイレって事でしょうか? 【和歌山県・紀州鉄道・西御坊駅】 |
御坊行列車に乗り込んで発車するのを待っていると、 後から来た二人の乗客が窓口で切符を求めているのが見 えました。 【紀州鉄道・御坊行列車・車内】 |
12:13に列車は私を含め乗客3人で西御坊駅より発車しました。次の市役所前では1人乗って来ま
した。
次に停車した紀州鉄道の本社がある紀伊御坊駅では、ひとりが乗って来ました。同駅に到着する直
前、ホームで乗客と駅員が談笑しているのが見えました。地元密着型の鉄道だけに顔なじみなんでし
ょうな。
紀伊御坊駅到着時に見えた車庫です。きょうは乗れな かったキテツ1は、この中にあるのでしょうか? 【紀州鉄道・御坊行列車・車内】 |
次の学門駅では2人が乗り、列車は乗客7人で終点の御坊駅に到着しようとしていました。駅着前
に乗客のひとりが運転士の後ろにある両替機で両替をしようとしたところ、運転士が「こっちの両替
機は壊れてるんで反対側のやつでお願いします」と言うのが聞こえました。
ほどなく列車は御坊駅に到着しましたが、同駅にはJRの改札しかありません。いったん改札を出
てJRの切符を買わねばならないのですが、どうやって出ればよいのだろう?
私は運転士に切符を渡しながら、「外に出るのはどうしたらいいんですかね?」と訪ねたところ、
「これを改札で駅員に渡して下さい」と薄紙の精算済票を渡されました。
車内で切符と引き替えに渡された精算済票です。ペラ ペラの薄紙製でした。これを持っていれば、そのままJ R列車に乗り継いで精算する事も出来るようです。 |
私は御坊駅の改札で精算済票を係員に渡すと、JRの切符を買うためにいったん外に出ました。こ
れで紀州鉄道の乗車は完了です。
何とも「味」のある鉄道でしたが、乗客が少なくて苦戦を強いられているのがありありと見て取れ
ました。何とかガンバってこの先も列車を走らせ続けて欲しいものです。
JRの御坊駅です。紀勢本線が通るほか、紀州鉄道の 起終点駅でもあります。紀勢本線は、同駅までが区間運 転エリアであり、和歌山←→御坊間は30分間隔で普通 列車が運行されていますが、ここから先の紀伊田辺まで は、ほぼ1時間間隔となります。 【和歌山県・御坊駅】 |
これで後は帰るだけなんですが、このままJRで大阪までサクっと帰ってもつまらないので、今回
は和歌山から先は南海で帰る事にしましょう。
私は券売機で和歌山市までの切符を買うと改札に向かいました。改札にいた係員は切符にスタンプ
を押しながら「和歌山ですね、間もなく2番乗り場から折り返しで発車します」と教えてくれました。
大阪近郊の駅は、すべて自動改札化されていますから改札で駅員とこのようなやりとりする事など
は皆無です。何かちょっと嬉しい気分になりました。
御坊駅に停車中の同駅始発・和歌山行・普通360M です。113系でした。 【和歌山県・御坊駅】 |
1両目に乗り込むと乗客は私を入れてもたったの3人しかいませんでした。12:30に御坊駅を出発
した列車は、途中停車駅で徐々に乗客を増やし、13:32に終点の和歌山駅に到着しました。ここで和
歌山市駅行に乗り替えます。和歌山に着いた時、外は大雨になっていました。
和歌山駅に停車中の和歌山市駅行の普通243Mです 105系の2両編成です。 【和歌山県・和歌山駅】 |
和歌山←→和歌山市間の列車に乗るのは、今年の元旦に実施した旅行記第10弾以来です。ま、今
回は単に移動に使うだけですが・・・。
13:42に和歌山を出発した243Mは、わずか6分で南海電鉄の和歌山市駅に到着しました。南海
の切符を買うために、いったん改札の外に出ますが、外への「出方」は、旅行記第10弾で経験済み
です。
第4部:「ちょっとこだわりの列車」その25/ 南海電鉄・特急『サザン20号』 |
さてと、和歌山市駅からは南海で難波駅まで戻りますが、今回は特急『サザン』に乗る事にしまし
ょう。
南海の難波駅と和歌山港間を結ぶ特急『サザン』は座席指定車と一般車の併結列車であり、これま
でに仕事で一般車には一度乗った事がありますが、せっかくなので今回は座席指定車に乗って見まし
ょう。
ここ和歌山市駅から乗っても良いのですが、『サザン』の始発駅は和歌山市駅からさらに南へと延
びている和歌山港線の終点である和歌山港駅なので、どうせならば始発駅から乗りましょう。
私は和歌山港までの切符を買うと和歌山港線のホームへと向かいましたが。なぜか同線のホームは
中間改札で南海本線のホーム群と隔てられていました。
和歌山市駅構内にある和歌山港線のホームです。同じ 会社の路線なのに、なぜか中間改札で仕切られていまし た。ちなみに左手に見える列車は南海本線の列車です。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山市駅】 |
私は中間改札に切符を通すと和歌山港行の列車に乗り込みました。列車は、南海電鉄の保有車両の
約半数を占める通勤型の7100系2両で編成されたワンマン列車でした。和歌山港線の乗客は少な
いのでしょうな。
和歌山市←→和歌山港間の和歌山港線は、わずか2.8キロの短い路線で、途中には3つの駅があり
ます。
路線は、難波←→和歌山市間を結ぶ南海本線の延長線っぽく見えるのですが、直通で運行されてい
るのは特急『サザン』と一部の急行のみで、普通列車は和歌山市駅を境に運行が分けられています。
14:07に列車は和歌山市駅から出発しました。私が乗っていた車両には、私を入れて7人が乗って
いました。
出発してすぐに右手に係留中の船が見えました。2つ目の停車駅となる築地橋の手前では、右手に
マリーナがありました。
それから間もなく、列車は和歌山港駅に到着しました。私は同駅こそが真の意味での南海本線の末
端駅だと思います。
南海電鉄・和歌山港駅です。四国の徳島へ向かう南海 フェリーへの乗換駅とあって立派な駅舎を持つ大きな駅 を想像していたのですが、南海本線の途中にある一般的 な有人駅と大して変わらないこじんまりした駅でした。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山港駅】 |
和歌山港駅の駅前の様子です。商店も民家もなく、道 路と工場があるだけでした。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山港駅】 |
駅前道路まで出ると、彼方の埠頭に徳島行のフェリー が停泊しているのが望見出来ました。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山港駅】 |
和歌山港駅で下車した乗客は5人にも満たなかったと思います。駅前には工場以外何もなく、人通
りも皆無でした。
少し離れた所にあるフェリー埠頭には立派なフェリーが停泊しているのが見えましたが、瀬戸大橋
が整備されて以降、和歌山回りのフェリーの利用者は、すっかり減ってしまったと聞いています。
一通り駅周辺の観察を終えた私は駅に戻りました。さてと、では特急『サザン20号』の指定券を
買わねばなりません。
とりあえず券売機で難波までの乗車券を購入しましたが、券売機を見回しても指定券のボタンが見
あたりません。
そこで券売機の横にあった、ひとつしかない窓口で『サザン』の指定券を求めたところ手売りで発
券してくれました。
乗車券(左)と窓口で購入した特急『サザン20号』 の指定券(右)です。定期券サイズの指定券は自動改札 機を通しません。 |
自動改札機に乗車券のみを通してホームに上がると、特急『サザン20号』は、すでに停車してい
ました。
2002年5月に廃止されるまでは、和歌山港駅より 2.6キロ先に水軒と言う小さな駅がありました。たぶん この線路が同駅まで延びていたのでしょう。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山港駅】 |
和歌山港駅に停車中の特急『サザン20号』です。指 定席車である10000系4両と一般車である7100系4両の 併結編成で、難波に向いて指定席車が後ろに連結されて いました。 【和歌山県・南海電鉄・和歌山港駅】 |
南海電鉄の特急型電車10000系の車内の様子です。J Rの特急と比べても遜色のない内装です。 【南海電鉄・特急『サザン20号』車内】 |
リクライニング・シートです。背もたれが厚目タイプの座席で、 この手のシートとしては水準レヴェルの座り心地でした。ロング・ シートの一般車と比べると雲泥の快適さです。 【南海電鉄・特急『サザン20号』車内】 |
窓は大型で、各座席上の荷物棚の下側には蛍光灯が付 いていました。 【南海電鉄・特急『サザン20号』車内】 |
自分の座席に収まって前方を見ると、客室出入口の透明なドアの向こう側に女性アテンダントの姿
が見えました。
南海本線の列車には、これまで数え切れないぐらい乗ってきましたが、それら3扉ロング・シート
の一般車と比べると指定席車は、まるで別世界です。
座席についてほどなく、特急『サザン20号』は定刻の14:30に和歌山港駅を出発しました。指定
席車の乗客は私ひとりと思いきや、意外にも他に二人乗っていました。
さっき来たばかりの和歌山港線を遡り、『サザン』は和歌山市駅に到着しました。さて、指定席車
に何人乗って来るのか見ものです。
と、言うのも、特急『サザン』には一般車も連結されていますし、難波までの所要時間の点でもオ
ール一般車の急行とわずか数分しか変わらないのです。
その急行も、ほぼ30分間隔で運行されており、しかも和歌山市駅始発なので、ほぼ座る事が出来
ます。そのような列車の運行状況で別料金を払ってまで指定席に乗ろうと考える人がいるものでしょ
うか?
興味津々で待っていると、なんと我が車両に5〜6人の人々が乗って来ました。それらの人々を観
察してみると、ほぼ皆さんが大きなバッグを携行しており旅行者風の小じゃれた服装をしていました。
なるほど・・・。
和歌山市駅を発車して間もなく、指定席車のみの案内放送がありました。まぁ、一般車の乗客に指
定席の案内や、号車ごとに乗降するドアが前後異なる指定席車の案内をしても意味がありませんわな。
案内放送が終わると、すぐに女性アテンダントが検札に来ました。我が車両の乗客は、私を入れて
も10人にも満たず、検札はすぐに終わってしまいました。
列車が岬公園駅に近づくと、降車ドアの案内放送がありました。それによると奇数号車は前、偶数
号車は後ろのドアから降りるようにとの事でした。
岬公園駅を出ると左手に海が見えました。尾崎駅に停車すると、驚いた事にひとり乗って来ました。
さらに、指定席と知らずに後方の車両に乗ってしまった人々が後ろのドアから入って来て前方の一般
車に向かおうとしましたが、あいにく前方のドアは閉め切りとなって通れません。
仮に前のドアが開いたとしても、その先の一般車との連結部は通路が接続されていないので車内を
通って一般車には行けないようになっていたのです。
次の停車駅である泉佐野が近づいて来ると、同駅から関空へと延びる空港線への乗り替え案内の放
送がありました。
泉佐野駅付近で車窓から見えた途方もなく高いビルです。これが 「りんくうタワー」ってやつなんでしょうか? 【南海電鉄・特急『サザン20号』車内】 |
泉佐野の次に停車した岸和田では、前方の一般車から降りる人々が見えましたが、我が指定席車か
ら降りる人はいませんでした。ま、そりゃそーでしょうな。
天下茶屋駅到着時には、高野線と地下鉄・堺筋線への乗り替え案内がありました。その次の停車駅
である新今宮はJRの環状線と関西本線との乗り替え駅であり、ここでは一般車から大勢の人が降り
るのが見えました。
南海本線の上り列車に乗ると、いつも新今宮で大勢の人が降りるのですが。大阪市内中心部以外の
方面に行く場合は、このまま難波まで乗るより新今宮でJRに乗り替えた方が移動の効率が良いから
なのでしょうな。
同駅では、何とひとりのおっちゃんが指定席車に乗って来てビックリさせられたのですが、指定席
と知るや「なんや、ややこしぃな!」とボヤいてから一般車の方に移動して行きました。
そして和歌山港を発って約1時間後、特急『サザン20号』は、終点の南海・難波駅の行き止まり
ホームに到着しました。快適な乗車でしたが、1時間しか乗れなかったのが残念です。
特急『サザン』の指定席車に使用されている南海電鉄10000系の 乗降ドアは往年の特急車をしのばせる折り戸式でした。 【大阪府・南海電鉄・難波駅】 |
特急『サザン』の併結部分です。後方が指定席車であ る10000系、前方が一般車の7100系です。『サザン』に は、全車10000系のオール指定席編成もあるそうです。 【大阪府・南海電鉄・難波駅】 |
一般車の7100系は、ご覧の通り3扉ロング・シートの 通勤型車両です。 【大阪府・南海電鉄・難波駅】 |
これが『サザン』の難波方先頭車です。反対側の、特 急然とした10000系の先頭車とはエラい「表情」の違い ですな。 【大阪府・南海電鉄・難波駅】 |
馴染みの南海・難波駅は、南海本線と高野線の列車が次々と発着していていつも活気があります。
改札を出た私は、通い慣れた通路を通って地下鉄の駅へと向かいました。
今回の「ファイナル・トレイン」は、大阪市営地下鉄 ・御堂筋線の新大阪行でした。 【大阪府・大阪市交通局・なんば駅】 |
これで今回の「旅」は終わりです。今回は「小旅行記」でありながら旅行記本編に匹敵する盛りだ
くさんの「旅」となりました。いや〜、満足満足。
『列車まかせの旅』小旅行記第5弾、おわり。
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