2002年12月28日
『列車まかせの旅』第10弾


第6部:「盲腸線探訪」その4/JR「和田岬線」

 次に乗るのは、この「旅」における "トリ" となる4本目の「盲腸線」こと「和田岬線」です。こ
の路線は正式には山陽本線の一部ですが、鉄道業界では古くから「和田岬線」で通っているそうなの
で、私もそう呼ぶ事にしました。

 営業キロは2.7キロ、僅かひと駅だけの路線で、元々は兵庫港と山陽本線を結ぶ貨物線だったそう
ですが貨物輸送はすでに廃止されており、現在は和田岬駅周辺にある工場群への通勤路線としての運
行されています。

 通勤路線だけに、この路線のダイヤは独特で、平日は朝7時から9時過ぎまでに7往復、夕方は1
7時から22時までに10往復のみ列車が運行されており、それが休日ともなると朝と夕方で各1往復
だけと運行本数が激減します。まさに通勤専用路線ですな。

 そして今日は休日であり、今から乗りに行くとなると17:15兵庫駅発まで列車がないので、大阪か
ら兵庫までの移動時間を差し引いても2時間ほど時間を潰す必要があります。

 さて、何をするかですが、私は『はるか3号』で梅田貨物駅の横を通過している時に、後でここを
見に来ようと決めていました。

 梅田貨物駅は道路を挟んで大阪駅の北側に隣接していますが、貨物駅の南面は壁で仕切られている
ので中を伺う事が出来ません。

 そこで貨物駅外周を右回りに回り、西側のフェンスのところから構内の様子を覗いて見る事にしま
しょう。運が良ければ機関車を見られるでしょう。

 本日の1本、梅田貨物駅横の自販機で買った伊藤園のデミタス・コーヒー
です。濃い口のビター・テイストで、口当たりは「クっ」と来ますが後味は
マイルドでした。

 大阪駅北側の道路を西へと歩き、貨物線の踏切を渡った所で北側へ曲がり、7〜8分ほど歩くと右
手のフェンス越しに貨物駅の構内が見えて来ました。

 見ると、構内にはコンテナ貨車や有蓋貨車などが留置されていましたが機関車は1両もおらず、人
影もまったく見当たりませんでした。

 ウロウロしている内にすっかり忘れてましたが今日は元旦でしたな。たぶんこりゃ休みだわ。そー
言えば安治川の貨物駅にも機関車が見当たりませんでしたが、休みの時は何処かに引き揚げてしまう
んですかね?

 空中庭園のある梅田スカイビルを左に見つつ、さらに先へと進むと、最近はすっかり見掛けなくな
ったワム80000型の有蓋貨車が留置されているのが目に留まりました。

 梅田貨物駅構内に留置されていたワム80000型の
有蓋貨車です。1万5000両以上が製造され、かつての貨
物列車と言えば、この貨車をメインに編成されていたも
のですが、列車貨物がコンテナ化されてしまった現在で
は出番がほとんど無くなり、そのほとんどが廃車になっ
たと聞いています。
【大阪府・梅田貨物駅】
 梅田貨物駅です。大阪駅周辺開発に伴い吹田への移転
が計画されています。その絡みかどうかは分かりません
が、構内には、一部、線路が撤去されている部分が見受
けられました。
【大阪府・梅田貨物駅】

 貨物駅構内の写真を撮っていると、京都へ向かう関空特急『はるか』がフェンス際にあった梅田貨
物線を走り過ぎて行きました。

 梅田貨物駅もあらかた見終わったので、この後は東海道本線沿いで貨物列車でもウォッチングしよ
うかと思っていたのですが、今日は走ってなさそうですな・・・。

 さて、どうやって時間を潰しましょうか。紀伊国屋書店で立ち読みでも・・・、と、思ったのです
が、やはり閉まってました。この様子だと、たぶん旭屋書店も閉まってるでしょうなぁ・・・。

 仕方がなかったので、梅田界隈をひたすらぶらぶらしながら時間を潰し、16時頃に大阪駅に戻り
ました。

 大阪駅から和田岬駅までの切符です。まずは山陽本線
の兵庫駅まで移動しなければなりません。

 「和田岬線」の存在は以前より知っていましたが乗車するのはこれが初めてです。事前に鉄道関連
HPで「予習」したところでは特殊な改札方法を取っているとの事なので、兵庫駅で様子を見る時間
を少し持とうと思い、「和田岬線」の列車が出る22分前に兵庫に着く東海道/山陽本線の列車に乗り
ました。

 大阪駅に到着する16:21発・網干行・普通789Tで
す。車両は、先代の新快速を務めたクロス・シートの2
21系でした。
【大阪府・大阪駅】

 789Tの乗車率は70%と言うところでしたが、普段からすると大阪駅から乗った人は少なかった
ような気がします。

 まぁ221系を使っているとは言え普通列車ですし、この路線の普通列車の乗客はいつも多いとは
言えないのでこんなもんかも知れませんね。

 30分ちょいで兵庫駅に到着しました。目的の「和田岬線」の列車が出るまでは22分あるので、様子
を見る時間は充分です。

 さっそく「和田岬線」への中間改札があるところへと行ってみましたが、そこにあった自動改札機
は、すべて閉まっていました。

 兵庫駅構内にある「和田岬線」への中間改札です。発
車20分前なのに改札は閉まっていました。どないせぇっ
ちゅーの!
【兵庫県・兵庫駅】

 はて、ここの改札から入るのではないのかな? 私は、その周囲に何か注意書きがないか探してみ
ましたが、それらしいものは見当たりませんでした。

 私はいったん山陽本線の下りホームへと戻り、一段低い所にある「和田岬線」のホームの様子を見
てみましたが、列車はすでに停車しており、乗務員が動き回っているのが見えました。

 兵庫駅の山陽本線下りホームから見た「和田岬線」の
ホームです。ご覧のように同線のホームは山陽本線のホ
ームよりも一段低い所にあります。
【兵庫県・兵庫駅】

 私は再び「和田岬線」の中間改札へと戻りましたが、やはり改札は閉まったままです。いったいど
うすりゃいいんだろ?

 ふと見ると、鉄道マニアらしき兄ィちゃんがひとりいて、やはり改札内を覗き込んでいました。彼
もまた戸惑っているようですな。

 中間改札の付近を見ると、私と彼以外には「和田岬線」に乗る乗客はいなさそうです。こーなりゃ
待ってみるしかないでしょう。

 発車15分前になっても改札は開かず、私がジリジリしながら待っていると、17:05にようやく自動
改札が開きました。

 すかさず私が切符を改札機に通すと、そのまま切符は回収されて戻って来ませんでした。鉄道ファ
ンHPを見て同路線については事前に「予習」していたので私は驚きませんでしたが、これが「和田
岬線」独特の乗車ルールなのです。

 同線の終点である和田岬駅は無人駅で自動改札も設置されていないので、兵庫から和田岬行に乗る
際は、切符は中間改札で回収され、乗客は切符無しで列車に乗る事になり、和田岬では、そのまま外
に出るのです。言うならば「先払い」みたいなものですね。

 一方、和田岬から兵庫行に乗る場合は、乗客は切符無しでそのまま列車に乗ります。そして兵庫駅
に着いたら、中間改札の手前に設置されている自動券売機で目的地までの切符を購入し、その切符で
中間改札を通ります。この時購入した切符には「和田岬線」の運賃も含まれているので、言わば「後
払い」になる分けですな。

 私が「和田岬線ルール」の中間改札を抜けると、そこにはやたらと長い通路があり、その先に同線
の列車である103系6両編成が待っていました。

 「和田岬線」のホームです。停車しているのは17:15
発の和田岬行531Mです。同線で運行される本日2本
目の列車にして早くも「終電」となります。
【兵庫県・兵庫駅】

 平日の朝夕は通勤客でごったがえすらしいのですが、休日(しかも元旦)である今日は人影はなく、
何と私が一番の客でした。土日休にこの路線に乗る客と言えば、地元の人々か鉄道マニアぐらいのも
のなのでしょう。

 例によって先頭車の写真を撮ろうとしたのですが、列車はホーム一杯に停車していた為、ホーム先
端からのアングルが確保できそうにありません。私は撮影を諦めて車内に入りました。

 中間当たりの車両に乗って発車を待っていましたが乗客は誰も乗って来ませんでした。マニアさん
がひとりいたはずですが、どうやら彼は後ろの方の車両に乗ったようですね。

 誰も乗っていない車内。たぶん土日休は、いつもこん
な調子なのでしょう。しかし、神戸の市街地を走ってい
る列車とは思えない光景ですな。
【和田岬線・531M車内】

 あたかも回送みたいに見える列車が兵庫駅を出ると、例によって「本日は和田岬線を御利用頂き、
誠にありがとうございます」と案内放送が始まり、型通り運転手と車掌の紹介があり、続いて「次は
終点、和田岬、和田岬です」で結ばれました。

 間もなく、右手に線路が分岐して行くのが見え、その線路の先には川崎重工・兵庫工場の門があり
ました。旅行記番外編第2弾で見た、東京の営団地下鉄に納車された05系は、ここの工場で製造さ
れた車両です。

 正月だけに工場内の照明はほとんど消されていましたが、薄暗い中、JR東日本に納車される高崎
線用のオレンジと緑の帯が入ったE231系の新造車が留置されているのが微かに見えました。

 川崎重工の前を過ぎて間もなく、列車は終点の和田岬駅に到着しました。兵庫駅を出てから僅か3
分の乗車でした。「羽衣支線」と並んで本日最短の乗車時間です。

 ホームへ降りてすぐ、私は列車の方向幕(行先表示)を撮り忘れていた事に気づきました。この方
向幕はここでしか見る事が出来ないのです。ぜひ撮らねば。

 「和田岬線」の列車に表示されている「兵庫←→和田
岬」の方向幕です。
【兵庫県・和田岬駅】

 列車の方向幕を写していると、その私の後ろを家族連れが通って行きました。どうやら乗客は私と
鉄道マニア(推定)さんだけではなかったようですな。

 方向幕を撮り終えてから改めてホームを見た私は、すぐ横に道路が走っているのに気づきましたが、
見ると何とその道路に直接降りられる階段がホーム中に幾つか設置されていました。

 ホームから直接、傍らの道路に降りられる階段です。この駅には
改札は無いとは聞いていましたが、ここまで出入自由とは・・・。
【兵庫県・和田岬駅】

 とりあえず駅舎を見に行かねば話にならないので、私はその階段を使わずにホームを先へと歩いて
行きました。

 駅舎へと向かう途中で写した531Mの写真です。こ
の列車は折り返し17:28発の兵庫行532Mとなります
 左にあるホームの彼方にポツンと見える黒い人影は
私と共に兵庫駅から乗って来た鉄道マニア(推定)さん
です。
【兵庫県・和田岬駅】
 上の画像を写した地点から反対の駅舎方向を写したと
ころです。ほぼ真ん中に写っている人影は、撮影中の私
の後ろを通過して行ったマニア(推定)さんです。「和
田岬線」の線路は、駅舎の左手で終わっています。
【兵庫県・和田岬駅】

 私より先に駅舎に着いていたマニア(推定)さんは、早速、あちこちの写真を撮っていました。私
が駅舎に向かっていると、一瞬、彼と視線が合いましたが、「ふ、お仲間かい」と言った目で見られ
たような気がしました。

 私は単なる「列車乗り好き」であり、鉄道マニアになるつもりはないのですが、元旦からこんなマ
ニアックな路線に乗りに来てりゃ、どっから見てもマニアに見えますわな。(^^;

 和田岬駅の駅舎です。ここには自動改札機も券売機も
設置されていません。無人駅ですが、地方にある無人駅
とは、なーんか雰囲気が違います。
【兵庫県・和田岬駅】
 見ての通り、駅には、いちおう有人改札用の設備はあります。か
つては駅員が配置されていたのでしょうか?
【兵庫県・和田岬駅】
 駅舎横の線路端にある列車止めです。その向こうには
ホームに停車中の532Mが見えます。
【兵庫県・和田岬駅】

 和田岬駅の駅前には幅の広い道路があり、建物もたくさんありましたが、一見して大きな工場があ
るようには見えず、予想していたより殺風景な感じがしました。

 もっとも、この時は日が落ちて暗くなっていたせいでよく見えなかっただけで、実は道路を挟んで
すぐ反対側には、三菱重工・神戸造船所の巨大な工場があった事を後から知りました。(^^;

 「和田岬線」は、同社の通勤客を山陽本線から運ぶ役割を担っているようですが、近年、神戸市営
地下鉄の海岸線が開通し、同線の和田岬駅が目の前に出来たので、両者の乗車率がどうなっているの
かが気になるところです。

 さてと、ぼちぼち折り返しの532Mが出る時間です、列車に戻りましょう。ふと見ると、ホーム
には何人かの人々が歩いていました。どうやら帰りは少しはお客がいるようですな。

 定刻の17:28、兵庫行・普通532Mは和田岬駅を出発しました。本日、2本目にして兵庫行の終
電となります。

 兵庫行532Mの車内です。少しは乗客が乗ったよう
なのですが、それでもご覧の通りです。
【和田岬線・普通・532M車内】

 この路線の土日の運行本数は僅か2往復ですが、車内にひとりだけで乗っていると、それも納得で
きました。この調子だと2両編成でもガラガラでしょうな。

 往路の531Mの走行時間は3分でしたが、復路の532Mは、なぜか4分掛けて兵庫駅へと到着
しました。

 列車から降りると、ホームの改札方面に7〜8人の人々が歩いて行くのが見えました。地元の人々
は降りた時に改札に近い前方車両に乗っていたんですな。

 兵庫駅に着いた532Mからは7〜8人の乗客が降り
たようです。皆さん前の車両に乗っていたようで、すで
に改札への通路を歩いていました。
【兵庫県・兵庫駅】
 兵庫駅の「和田岬線」ホームから駅舎本体へと繋がる
長い通路です。通路の末端に自動券売機があり、その左
手に中間改札があります。
【広島県・三段峡】

 さてと、ここで切符を買わなければなりません。他の乗客からかなり遅れてひとりで通路を歩いて
行くと、皆さんはさっさと改札を抜けて出て行ってしまい、券売機の前には子供連れの夫婦が一組だ
け残っていました。たぶん地元の人々は定期でも持っているのでしょう。

 どうやら夫婦も地元の方のようですが、例によって子供をあやしつけつつ券売機の前でモタモタし
ていました。

 券売機は2台あったので、私はもう1台の前に行くと、頭上に掲げられていた運賃表に目を通して
大阪までの運賃を確認し切符を買いました。

 和田岬→大阪の切符です。券売機が置かれているのは
兵庫駅ですが、発行されるのは和田岬からの切符となる
のです。

 未だにワイワイやっている夫婦を後に残し、私は中間改札に切符を通しました。往路と違い、今度
は取出口から切符が出て来ました。後はこの切符を持って普通に列車に乗るだけです。

 大阪方面行のホームに上がると、5分も経たずに京都行の各駅停車が入って来たので、この列車に
乗る事にしました。

 後続に快速に乗れば早く帰れるのですが、そっちは座れるかどうか分からないし、どうせ急ぐ「旅」
でもないので・・・。

 兵庫駅に到着する京都行の普通210Bです。これが
本日のファイナル・ショットとなります。
【兵庫県・兵庫駅】

 210Bは、40分ちょい掛かって大阪駅に到着しました。これで今回の「旅」は終了です。終わっ
てみると、な〜んかせわしない「旅」でした。

 それもそのはず、今回乗った列車は何と18本、これは旅行記史上最多の乗車本数となりました。乗
った車両は関空特急『はるか3号』の281系を筆頭に、近郊型の223系4本、221系1本、通
勤型の103系8本、103系リニューアル1本、105系2本、201系1本でした。まさに関西
の近郊/通勤型車両のオンパレードでしたな。

 今回は、ごく近場を巡っただけの「旅」でしたが、それでもまあまあ楽しめました。遠くへ行くの
だけが「旅」じゃないってことですね。

 本「旅」で乗車した4本の「盲腸線」の内、「羽衣支線」以外は初乗りでしたが、その中で最も印
象に残ったのは「和田岬線」でした。

 これはやはり、他の「盲腸線」と比べて遙かに少ない運行本数と特異な運行時間が印象的だったか
らだと思います。

 しかし、「和田岬線」の路線途中には、廃駅や車両メーカーである川崎重工への引込線があるなど、
まだまだ楽しめる要素は充分にあり、今回の乗車だけでは、その魅力を堪能し切れたとは言い難いで
しょうな。

 「和田岬線」は、またじっくりと楽しみに来たいと思います。それと、和歌山←→和歌山市間の紀
和駅も訪れなければならないでしょう。

 それらを訪ねる際は、大掛かりな旅行記の一部としてではなく、気軽な番外編のひとつとして行き
たいと思います。

 『列車まかせの旅』第10弾、おわり。


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