「想い出の古本屋1」
夜7時くらいと記憶している。国道17号を上り帰宅の途中、O市付近でふと車を右折した。
標識にはK市とあり、K市なら多少の土地間もあり、裏道も知っている。
いくつかチェックしたい古本屋もある。
記憶は定かではないが、恐らくそんな閃きだっと思う。
しばらく車を走らせると、なんとも寂しい道にでた。
でもそこにある標識は、直進すればK市とある。
更に走ること数分「古本」の看板が目に止まった。
そこは、3人も入れば満員となる小さな店だった。
店に入ると、ほぼ同世代の店主が暇そうにテレビを見ていた。
棚を見ると、絶版が並んでいる。プレミア価格ではあるが、恐ろしく安い。
自分しか客はいないのだが、まるで競争の様に、棚から本を抜いた。
店主は元来マニアで、工員が主業。交代勤務もあるから、店を開けるのは不定期らしい。
その後、数回、その店に行った。棚は変わらない。当然、本を買うのは少なくなる。
その店の事を忘れかけた頃、店主から連絡がきた。
店を閉めるので、安くするから、来てくれとの内容だった。
聞く所によると、その後工員をやめ大きな店舗を構えたが、失敗したとの事だった。
どうでも良い本が大部分であったが、36万の買取りをした。
その日は疲れだけが残った。
 
 



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