「ちょっとこだわりの列車」その10/ライナー『はんわライナー1号』 |
JRの列車種別の中に「ライナー」と言うのがあります。平たく言うと座席定員制の快速列車であ
り、乗車するには乗車整理券もしくはライナー券が必要となります。
この列車が設定された目的は「快適な通勤/通学用」であり、朝は都市部へ向けて、夕方は都市部
から外へ向かって運行されているのが特徴です。
もうひとつの特徴は、その車両として特急型が充当されている事です。まぁ追加料金を取っておい
て普通の車両に乗せられたんでは誰も利用しませんわな。
この特異な設定のライナーは全国の都市部で運行されており、それぞれに固有の愛称が付けられて
います。
列車好きとしては、愛称付き快速と同様に乗り潰ししたい列車なのですが、通勤/通学用を目的と
しているだけに平日しか運行されていない列車が多いのが厄介なところです。
で、とりあえず1本乗って見るべぇと言う事で、関西圏で運行されているライナーの内、阪和線の
天王寺←→和歌山間を走っている『はんわライナー』に乗る事にしました。
『はんわライナー』は、平日は朝・上り3本、夕方・下り5本、土日休は朝・上り2本、夕方・下
り3本が運行されており、土日休も運行本数が多いので、ライナー初心者の私にとってはうってつけ
の列車です。
決行日を2月8日と定め、夕方に天王寺を出る下りの1本目となる『はんわライナー1号』に乗る
事にしました。
当日はあいにくの雨になってしまいましたが、今回は列車を乗り継ぐだけで外をウロついたりはし
ないので問題はありません。
私は大阪駅より環状線外回りの列車に乗ってまず天王寺へと向かいました。雨の影響でしょうか、
列車は4分遅れていました。
座席は満杯でしたが、ハナから座れるとは思っていませんでした。発車して間もなく、和歌山線が
工事のため運休する事と、代行バスが運行されない旨を案内する車内放送がありました。
いつものように京橋では乗客がごっそり入れ替わりました。近鉄、地下鉄との乗替駅である鶴橋で
は乗客がドっと降りて座る事が出来ました。まぁ、あと3駅で天王寺ですが・・・。
天王寺では残っていた乗客の多くが降りましたが、ごっそりと乗って来て、再び座席が満杯の状態
で列車は発車して行きました。
大阪から天王寺までの移動で乗った環状線外回り列車 1596は103系のリニューアル車でした。リニューアル 車は窓の形状もノーマルとは異なっています。 【大阪府・天王寺駅】 |
天王寺駅14番ホームより出発して行く環状線外回り 列車1596です。JRのイヴェント列車「かにカニ・エク スプレス」を宣伝するヘッド・マークが取り付けられて いました。 【大阪府・天王寺駅】 |
さてと、まずはライナーに乗るための乗車整理券を買わなければなりませんが、どこに行けばある
のでしょうか?
天王寺駅には、和歌山方面への列車用として、行き止まり式のホームが6つある他に、大阪方面か
らの直通列車が停まるホームが2つあります。
『はんわライナー』がどのホームから出るのかは知りませんでしたが、私はとりあえず降りたホー
ムの近くにある直通列車用の16番ホームに行って見ました。
すると、ホームの上に吊されていた乗車位置案内の看板に『はんわライナー』の文字を見つけたの
で、このホームで良いのだろうと判断しました。
では、乗車整理券は何処で買えばいいのだろう? ホーム上に何か手掛かりがあるだろうと何度も
往復して見ましたが、「『はんわライナー』に乗車するには乗車整理券が必要です」の案内表示を見
つけただけでした。だからその乗車整理券は何処で買うんだっつーの?
とりあえず和歌山方面行列車専用の行き止まり式ホーム群の所や集合改札の所にも行って見ました
が、整理券を発行している窓口や券売機の類は見当たりませんでした。
ライナーが出るホームの近くにあるのは間違いないはずなのですが、そもそもそのホームが判然と
しません。
私は壁に掲げられている和歌山方面行列車の時刻表も確認して見ましたが、発着番線までは記載さ
れていませんでした。
仕方がないので16番ホームに戻り様子を見る事にしました。ホーム上の列車案内盤には、3本あ
との列車まで案内が表示されており、発着番線も表示されるので、いずれは『はんわライナー1号』
も出てくるでしょう。
しかし、いくら待っても『はんわライナー』の表示が出て来ません。運行本数が多いので、3行し
か表示部が無い案内板では、せいぜい10分あとの列車までしか表示されないのです。
時間が迫って来てジリジリしている私の目の前の16番ホームからは、白浜行の特急『くろしお2
7号』が発車して行きました。
『はんわライナー1号』が出るまであと10分ちょいぐらいになって、ようやく案内板の最下段に表
示が現れました。
[18:36・はんわライナー1号・1番線]
「1番かよ!!」、私は心の中で毒づくと階段を登って1番線へと急ぎました。まだ乗車整理券も買
っちゃいません。
1番ホームへ向かって陸橋を登ると、そこに発券所みたいな小屋があり、何人かの乗客が並んでい
ました。たぶんこいつが整理券発行所です。短い列の最後尾に並んで覗いて見ると、やはり乗車整理
券の発行所で間違いありませんでした。
天王寺駅の和歌山方面行列車用行き止まり式ホーム群 をまたぐ陸橋上にあるライナー用乗車整理券発行所です 【大阪府・天王寺駅】 |
やがて私の番が来たので、何も言わずに窓口に310円を置くと、「ありがとうございます」の言葉
と共に見慣れぬ軟券が出てきました。
初めて見るライナーの乗車整理券です。座席指定のな い乗車定員制だと思っていたのですが、券面に書かれて いる「1号車3番」ってのは何でしょう? 普通、座席 を指定する場合は「3番A席」まで書かれているもので すが・・・。 |
乗車整理券を買った私はさっそく1番ホームに降りてみました。そこには、国鉄色の塗装を纏った
特急型の381系が停車していました。
『はんわライナー』に使用されている特急型の381 系です。急曲線が連続する路線での速度向上を目的に開 発された国内初の「振子式」車体を持ちます。従来は紀 勢本線の特急として運用されています。 【大阪府・天王寺駅】 |
381系は1973年に登場した型式ですが、この143 号車は1976年に増備されたグループなんだそうです。 【大阪府・天王寺駅】 |
方向幕(行先表示)には、「はんわライナー・天王寺 ←→和歌山」と書かれていました。ライナーの文字が黄 色で書かれいるため、うまく写っていませんな。 【大阪府・天王寺駅】 |
振子式である381系では、重量物をすべて床下に実 装している為、屋根上は何もなくスッキリしています。 また、車体を傾ける関係で車体上部の幅が絞られている のも振子式車体の特徴です。 【大阪府・天王寺駅】 |
古い車体なので号車番号表示などはプレート式です。 『はんわライナー』は特急ではないのですが特急のプレ ートが入れられてますな。 【大阪府・天王寺駅】 |
1号車の車内の様子です。たぶん、オリジナルのまま なんだと思います。 【『はんわライナー1号』車内】 |
座席は、座席部を前後させると連動して背もたれが傾く簡易式の リクライニング・シートでした。 【『はんわライナー1号』車内】 |
座席背面には大型テーブルが装備されていました。旅行記第7弾 で乗った特急『かもしか』に使用されていた485系の座席は同じ 簡易リクライニング式でしたがテーブルは小型の簡易式でした。座 席のグレードとしては、こっちの方が上ですな。 【『はんわライナー1号』車内】 |
窓です。幅広の大型窓で、2座席ごとに1枚の窓があ るピッチでした。 【『はんわライナー1号』車内】 |
381系には、窓枠に物を置くスペースが無い代わり に小テーブルが備えられています。その下には昔ながら の灰皿がありました。通勤用たる本列車は、もちろん喫 煙可です。 【『はんわライナー1号』車内】 |
私は当初、車両の中程の座席に座っていたのですが、乗車整理券に「3番」の記述があったのを思
い出し、車両前方の3番列の左窓側席に移りました。ここでええんやろな?
雨の影響でしょうか、先発の列車が遅れている関係で『はんわライナー1号』も定刻より2分遅れ
で天王寺駅を出発しました。
私が乗っていた1号車には、わずか12人しか乗客がいませんでした。平日はもっと多いのでしょ
うかね? ちなみに、乗客のほとんどがスーツ姿でした。
発車して間もなく、一列前のサラリーマンが、自分の前にあるテーブルの留め具に乗車整理券を挟
むのが窓の写り込みで見えました。
たぶん、検札に備える為なんでしょうが、なかなか "通" な事する人やな。と、思っていたら、少
なくとも前方の座席に座っている3人が同じようにしていました。これは「ライナー流」の乗り方っ
てやつなのか?
発車して間もなく、前席のサラリーマンはテーブルの 留め具に乗車整理券を挟みました。これが「はんわライ ナー流」の乗り方か? 【『はんわライナー1号』車内】 |
『はんわライナー1号』の途中停車駅は、鳳、和泉府中、東岸和田、熊取、和泉砂川の5ヶ所です。
これは同路線を走る紀州路快速の半分の数ですが、関西空港線との分岐駅である日根野が入っていな
いのが意外でした。
特急並の走りで15分ほど走ったところで最初の停車駅の鳳に到着。鳳駅からは旅行記第10弾で乗
った羽衣支線が分岐しています。
同駅での乗降はありませんでした。見ると、左側のホームには和歌山行の普通列車が停まっていま
した。
さらに5分ちょいで和泉府中駅に到着。ここでは二人が降りました。同駅に到着した時点で列車の
遅れは1分程度まで短縮されていました。
また同駅では、左側のホームに和泉砂川行の普通列車が停まっていました。各駅での普通列車への
接続も万全ですな。
今回の1本。『はんわライナー』での道中で飲んだ缶コーヒー、"銀ボス" こと『ボス/ファイン・ロースト』です。天王寺のホームで買った物ですが、 よく見ると缶の上部にはキオスクとハート・インのロゴが入っていました。 |
和泉府中から5分で東岸和田駅に到着。ここでは一人が降り、対面のホームには、やはり103系
リニューアル車の普通列車が停まっていました。
さらに5分ちょいで熊取駅に到着。ここでは何人かが降りました。同駅では、左側のホームに関空
快速5177Mが停まっているのが見えました。日根野に停車しなくても、途中で関空快速に乗り替えれ
ば関空には行けますな。
6分走って和泉砂川駅に到着。ここでは二人が降りました。同駅が最後の途中停車駅となりますが、
隣のホームには普通列車はいませんでした。
和泉砂川を出ると列車は山間部へと入って行きます。いよいよ振子式車体の本領発揮と言うところ
でしょうが、この辺りの曲線は紀勢本線ほどではないようで、車体の傾斜はそれほど分かりませんで
した。
ほどなく検札が来ました。下り列車は、この最後の区間で検札をするみたいですな。私は乗車券と
乗車整理券の両方を見せました。
和泉砂川から15分ほどで和歌山駅に到着しました。定刻の到着時刻は19:29ですが、遅れていた
かどうかは確認し忘れました。(^^;
今回は『はんわライナー』に乗る事だけが目的だったので、これでトンボ帰りします。10分後に
大阪(京橋)行の紀州路快速が出るので、私は改札を出て切符を買うとすぐにホームに戻りました。
和歌山駅に停車中の19:39発・大阪(京橋)行・紀州 路快速4582Hです。 【和歌山県・和歌山駅】 |
今や東海道/山陽本線でも4列座席タイプが走ってい る223系ですが、モノの本によると、そもそも223 系は関西空港輸送用に開発された車両であり、関空/紀 州路快速に使用されている車両が「元祖」なんだそうで す。車内は2+1列の3列座席となっていますが、これ は旅行カバンなどの大型荷物を置くスペースを確保する 為だそうです。 【紀州路快速4582H車内】 |
紀州路快速の座席に座った私は、ほんの10分前に座っていた『はんわライナー』の座席との座り
心地の落差に思わず顔をしかめました。しかもデッキを持たない223系の車内は風が吹き抜けて少
々涼しい・・・。
思わずライナーの売り文句である「快適な通勤」が頭に浮かびました。特急型電車と近郊型電車の
乗り心地が違うのは当たり前ですが、これならば310円の追加料金を払うだけの値打ちは充分にある
と思いました。
紀州路快速4582Hは定刻の19:39に和歌山駅を発車しました。このまま乗って行けば大阪まで帰れる
のですが、私は途中の日根野駅で降りる事にしていました。
わざわざ途中で降りるのは、日根野始発の天王寺行・快速に乗る為でした。阪和線はしばしば利用
していましたが、その際は関空/紀州路快速か普通列車ばかりに乗っていた為、同路線を走る一般の
快速や区間快速にはこれまで乗った事が無かったのです。
阪和線ではブルーの帯が入った113系を何度か見掛けていたので、たぶんそれが一般快速だろう
と私は予想していました。
和歌山から20分で日根野駅に到着。ただし、同駅で前方に関空快速4182Mを連結する為、我が紀
州路快速は駅の手前でいったん停車しました。
そのまま徐行して駅に進入し、ホームの途中で再び停止しました。最後に最徐行で前進して連結。
そこでようやくドアが開かれました。
下車した私は、天王寺行・快速が出るホームを確認すべく、改札に向かうつもりで手近にあった陸
橋を登りましたが、間抜けな事にその陸橋は和歌山方面行ホームとの連絡用であり、隣のホームにし
か行けませんでした。
和歌山方面行のホームには普通列車とおぼしき103系が停車していました。私はその横を通過し
てその先にあった陸橋を登りました。
陸橋の上にあった改札で天王寺行のホームを確認すると、何と、さっき103系が停まっていたホ
ームではありませんか。
元来た階段を降りて103系のところに行って見ると、なるほど、車両横の方向幕には「快速・天
王寺」と表示されていました。
和歌山方面行の普通列車とばかり思っていた103系 の方向幕には「快速・天王寺」と表示が出ていました。 【大阪府・日根野駅】 |
何とまぁ、関西圏で103系の快速列車があるとは思いもしませんでした。地方ならばあるかも知
れませんが、関西の他の路線では聞いた事がないので、たぶん阪和線限定なのではないでしょうか?
日根野駅に停車中の天王寺行・快速2158Hです。使用 車両はノーマルの103系でした。 【大阪府・日根野駅】 |
私は写真を撮った後、先頭車に乗り込みました。元々、乗客は少なさそうでしたが、雨が降ってい
る中でホーム上に屋根がない先頭車まで来る客はおらず、先頭車に乗ったのは私ひとりだけでした。
今さらながらですがオリジナル103系の窓です。リ ニューアル車では1窓化されていますが、オリジナルは このように2窓になっています。 【阪和線・天王寺行・快速2158H車内】 |
103系には、車両端面にも開閉可能な窓が付いています。他の 車両では意識して見た事がないのですが、ここの窓が開くのは10 3系ぐらいではないでしょうか? 【阪和線・天王寺行・快速2158H車内】 |
快速2158Hは、定刻の21:11に日根野駅を出発しました。途中の熊取、東岸和田、和泉砂川では誰も
乗って来ず、鳳でようやく一人乗りました。
次の三国ヶ丘でも一人乗って私を入れて乗客は3人となりましたが、最後の途中停車駅である堺市
では乗車はなく、結局、3人のまま終点の天王寺に着きました。
日根野→天王寺間は、関空/紀州路快速に乗れば32分で行けますが、今回の快速では37分掛か
りました。5分程度の差ならば、どっちに乗っても大差はありませんな。
天王寺駅のホームに降りてみると、ちょうど隣の1番ホームから下りライナーとしては最終となる
『はんわライナー5号』が出るところでした。
天王寺駅の1番ホームから発車する『はんわライナー 5号』です。左に見える白い窓口小屋は乗車整理券の発 券所です。私が買ったのは跨線陸橋上の発券所でしたか ら、少なくとも発券所は2ヶ所ある分けですな。 【大阪府・天王寺駅】 |
『はんわライナー5号』を見送った後、私は環状線内回り列車の出るホームへと行きました。
天王寺駅に停車中の環状線内回り列車2478Yです。ど うやら同駅始発の列車だったらしく楽勝で座れました。 【大阪府・天王寺駅】 |
これでライナー1本目の乗車は果たしました。実際に乗って見てJRが謳う「快適な通勤」と言う
のも納得出来ました。
この調子でライナーの乗り潰しをして行きたいのですが、平日重視と朝夕のみの運行ダイヤに阻ま
れてトントン拍子には行きそうにありません・・・。
関西圏には、今回乗った『はんわライナー』の他にも、京都府南端の加茂とJR難波間を走る『や
まとじライナー』、滋賀県の米原と大阪間を走る『びわこライナー』などがありますが、これらの列
車に乗るとなると、少々、工夫が必要になりそうです。
ま、そこを何とかするのも、私の「旅」の楽しみのひとつなんですがね・・・。(^^;
『列車まかせの旅』小旅行第2弾、おわり。
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