2002年12月01日
『列車まかせの旅』第7弾


第2部:「ちょっとこだわりの路線」その2/JR五能線

 13:33に奥羽本線の東能代駅で特急『かもしか3号』から降りると、対面のホームには13:43発・深
浦行の五能線・普通列車321Dが停車していました。

 東能代駅に停車している深浦行の五能線・普通列車3
21Dです。車両はローカル線用に量産された気動(デ
ィーゼル)車のキハ40系でした。
【秋田県・東能代駅】

 さて、第2部で乗車する事にした五能線ですが、奥羽本線の東能代駅(秋田県)を起点とし、日本
海沿岸を巡って奥羽本線の川部駅(青森県)に至るローカル線です。

 五能線の列車は、東能代←→能代間が区間運転で日に14往復、東能代←→深浦間、深浦←→川部
(弘前)間、鰺ヶ沢←→川部(弘前)間がそれぞれ日に5往復運行されています。

 五能線を紹介している個人開設HPの記事によると、日本海沿岸を走る五能線の車窓からの景色は
なかなかのものだそうなので、ひとつ見に行って見る事にした次第です。

 東能代駅に停車していた五能線の車両は地方ローカル線用に量産された気動車のキハ40系でした。
気動列車は、かつて何度か乗車した事がありますが、「旅行記」シリーズではこれが始めての乗車に
なります。

 キハ40系の車内です。ローカル線得意のワンマン・
カーであり整理券の発行機(赤い箱)が見えます。
【五能線・普通列車321D車内】
 座席はセミ・クロス式であり、ボックス式のクロス・シートは1
15系などの車両と同じものでした。
【五能線・普通列車321D車内】
 画像にあるように、乗降口付近はロング・シートにな
っています。
【五能線・普通列車321D車内】

 2両編成の321Dは、定刻の13:43に東能代駅を出発しました。私は2両目に乗りましたが、乗
客はわずか4人程度でした。

 久々に聞くディーゼル・エンジン音を轟かせながら走り始めたキハ40ですが、やはり電車と比べ
ると加速が鈍いですな。しかし、これが気動列車の「味」でもあります。

 列車は5分程度で能代駅に到着しました。ワンマン・カーなので1両目からの乗降となります。こ
の列車では、乗降客がドアの横にあるボタンを押してドアを開閉します。

 窓からホーム前方を眺めると、白のブラウスにピンクのスカートと言う珍しい制服の女子高生が5
〜6人、1両目に乗り込んで行きました。

 間もなく彼女たちは2両目に移ってきて、私の斜め後ろの席に座って声を上げてはしゃぎ始めまし
たが・・・、女の子ならば許す!(^^;

 鳥形駅付近の沿線風景です。この辺は田んぼばかりで
まだ海は見えません。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 321Dは、ほぼ5分間隔で駅に停車しました、ずいぶんと地域密着型のローカル線ですな。良い
ことです。

 驚いた事にホームが舗装されていない駅がいくつもありました。乗降が少ない為なのか、それらの
駅ではホームにかなり草が生えていました。

 東八森駅です。なんとホームは舗装されておらず、草が延びてい
ました。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 あと驚かされたのは、小さな踏切に遮断機がほとんど無い事です。この辺りの五能線には人が渡る
為の、ごく小さな踏切が多数あるのですが、それらの踏切には長方形の板を×印に組んだ立札がある
のみで接近警報機すら付いていませんでした。

 まぁ列車の運行本数は1日に4〜5本程度ですし見通しも非常に良いので、十分に安全だと見てい
るのかも知れませんね。

 八森駅の手前で日本海が見えました。もっとも、列車
はすぐに内陸に入ってしまいましたが・・・。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】
 八森駅のすぐ手前で巨大な風車が見えました。「旅行
記」第3弾で『日本海1号』に乗っていた時にも秋田県
内の羽越本線道川駅付近で同じタイプの風車を見ました
この辺では、風力発電が盛んなようですね。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 八森駅に着くと例の女子高生のひとりが下車しました。ホームに降りた女の子は、駅の出口へ向か
わず、何とホーム先端から線路へ降り、平気で構内を歩いて行きます。

 列車の運転手も何も言わないところを見ると、どうやら何でもアリのようですな。さすがはローカ
ル線!

 次の滝ノ間駅では2両目がホームからハミ出していました。女子高生の残りが全員ここで降り、車
内は静かになりました。車窓から見ると、駅のすぐ前が降り坂になっていて彼女たちは一塊りになっ
て降りて行きます。

 滝ノ間から7〜8分で列車は岩館駅に到着しました。車内アナウンスがあり、何と対向列車待ちで
20分も停車するとの事でした。うーむ・・・。

 それを聞いた乗客の何人かはホームに降り、トイレに行ったりタバコを喫ったり待合室の自販機で
ジュース類を買ったりしていました。

 列車マニアらしき人達もいて、カメラを持ってホームを行ったり来たりしていましたが、その中の
ひとりは一眼レフのカメラに巨大な望遠レンズを装着していました。近距離撮影になるのに、そげな
レンズを着けてて写せるんかいな?

 岩館駅です。ここは有人駅で「みどりの窓口」もあり
ます。岩館には漁港があるとの事です。画像中央にある
駅舎入口の中は椅子が並べられコカコーラの自販機が置
かれた待合室になっていました。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】
 待つ事20分、ようやく対面ホームに対向列車の東能代
行326Dが入って来ました。
 見ると、降りた運転手が誰かを急かしていました。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 対向の326Dが着くと、降りた運転手が列車の前に現れ、誰かを急かしています。ほどなく老夫
婦が列車の影から現れ、線路を渡ってこちらの列車に向かってきました。どうやら乗る列車の方面を
間違えてしまったようですね。

 老夫婦が乗り込んで間もなく、我が321Dは岩館駅を出発しました。岩館を出ると視界が開け、
日本海がとてもよく見えました。

 岩館を出たところで見えた日本海です。なかなかの景
色ですが、五能線から見える景色としては、ほんの序の
口でした。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】
 岩館駅と次の大間越駅間の車窓からのスナップその2
です。いいですねぇ〜。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】
 岩館→大間越間スナップその3です。岸辺は砂浜っぽ
いのですが、黒々とした岩が散在していました。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】
 岩館→大間越間スナップその4です。海水浴場でしょ
うか?
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 岩館→大間越間はけっこう距離があり10分程度掛かりました。大間越の次は「白神岳登山口」と言
う駅でした。

 岩崎村のHPで調べたところ、標高1235メートルの白神岳は恵まれたブナ原生林をたたえ、山頂か
らの眺望の良さと海抜0メートルから登山が出来る事でそこそこ知られているとの事です。しかも
「世界自然遺産」や「新日本百名山」にも選ばれている、けっこうメジャーな山なんだそうです。

 白神岳登山口の次の松神駅の手前には、海と山腹の間
の狭い土地に田んぼがありました。地元の人々は、こん
な狭い土地でも有効に活用しているんですな。
 左手にあるのは防風林で、その先は海です。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 松神駅です。駅舎は、列車貨物のコンテナ化により余
剰となった「ワム」型の有蓋貨車を流用したものです。
北能代駅もこの手の駅舎でした。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 松神の次は「十二湖」と書いて、そのまんま「じゅうにこ」と読む駅でした。ここには、山手に文
字通り多数の湖沼があるとの事です。

 この駅では、けっこう大勢が乗り込んで来ました。私は車両左列のボックス・シートにひとりで座
っていたのですが、ここで私の右手のボックスに2人連れの女の子が乗って来ました。皆さん十二湖
の辺にあるリフレッシュ村にでも行っていたのでしょうか?

 十二湖から3つ目にウェスパ椿山と言う駅があります。駅のすぐ前にはコテージ村があり、展望風
呂やレストラン、物産館などがあり、駐車場にはけっこう車が止まっていましたが、なぜか我が列車
は通過してしまいました。

 時刻表を見ても、ここに止まる普通列車は1本もありません。列車が止まらない駅なんか造って何
の意味があるのだろう?

 後に知った事ですが、ここにはジョイフル・トレインである快速『リゾートしらかみ』しか止まら
ないんだそうです。考えてみれば、五能線の普通列車は主に地元の人々のために運行されているので
あり、地元の人達がウェスパ椿山を利用するとも思えませんわな。

 通過したウェスパ椿山の次の艫作(へなし)駅では、そこそこの人数が降りました。乗っている時
は、「無人駅なのに何かあるんかな?」と不思議に思いましたが、これまた後で調べたところでは、
この駅の近場には「不老不死温泉」なる露天風呂があるとの事でした。

 艫作を出て次の横磯に停車した後、321Dは終点の深浦駅に到着しました。東能代から2時間2
分の乗車でした。

 終点、深浦駅の手前で見えた港では、大きな岩が見え
ました。
【五能線・普通列車321Dの車窓より】

 キハ40系のドア手動開閉ボタンです。残念がら今回
は操作する機会はありませんでした。
【五能線・普通列車321D】

 深浦では20人前後の人々が降りましたが、一部の人達はホームに残りました。20分後に出る弘前行
普通列車2833Dに乗るのでしょう。私もその列車に乗るつもりです。

 私は東能代までの乗車券しか持っていなかったので、いったん精算して改札の外に出ました。駅前
の風景を写すつもりでしたが、その前に青森までの切符を買う事にしました。

 分かってはいた事ですが、いちおう近距離運賃表に目を通して青森が載っていない事を確認してか
ら窓口へと行きました。

私「川部経由で青森までお願いします」

駅員氏「青森ね」

 切符とお釣りを私に渡しながら、駅員氏は少し鼻に掛かったのんびりした口調で、

駅員氏「列車は間もなくヌ(2)番線に到着スますんで」

おぉ〜、短いセリフながら、やっとそれらしい東北弁を聞く事が出来ました。321Dに乗っていた
時にも、地元らしい人々が会話をしているのを聞きましたが、残念ながら訛りらしい訛りは聞けませ
んでした。

 私の地元、関西でもそうなんですが、今日びは、どこもかしこも標準語化が進んで訛りが薄れてし
まい、土地土地の「味」が薄れて行くように思えてなりません。

 深浦駅の窓口で買った青森までの乗車券です。川部駅
経由ですが、券面には「経由:藤崎・奥羽」と書かれて
いました。

 ま、それはともかく。深浦駅は五能線の中間点とも言える駅で、ほとんどの列車は、この駅を着発
として川部(青森)方面と東能代方面にそれぞれ運行されています。

 深浦の駅前です。ロータリーは無く、自動車が10台前
後止められるスペースがあるのみで、そのすぐ先は国道
101号線が通っています。
 国道から数十メートル向こうは、もう海です。
【青森県・深浦駅】
 深浦駅前の国道101号線を反対側に渡ったところで
北(北東)方向を写したところです。
【青森県・深浦駅】
 同じ所から南(南西)方向を写したところです。こち
らには商店街がありました。
【青森県・深浦駅】
 上の画像を写したところから、ほんの10メートルばか
し海側に移動したところから写した画像です。駅のすぐ
前だと言うのに、このロケーションの素晴らしい事。
【青森県・深浦駅】
 駅へと戻りながら写した深浦駅です。駅舎は小ぢんま
りしています。ちなみにトイレは改札の外にあります。
【青森県・深浦駅】

 駅へ戻ると、弘前行の普通列車2833Dがすでに到着していました。

 五能線の普通列車のツー・ショットです。右の列車が
ここまで乗って来た321Dの折り返し運転となります
15:57発・東能代行328D。左の列車がこれから私が
乗る16:04発・弘前行2833Dです。
【青森県・深浦駅】

 弘前行の列車に乗り込むと、またも左側のボックス・シートを確保しました。車内はガラガラで、
空いている席もチラホラありました。乗客の中には、321Dの車内で見掛けた顔ぶれも何人かいま
した。

 車内で待っていると、対面ホームにいた東能代行の328Dが先に発車して行きました。ホームに
いた高校生の女の子が出て行く列車に乗った彼氏に手を振っていました。青春してるねぇ。

 それから7分後、我が弘前行2833Dも深浦駅から発車しました。奥羽本線の川部駅到着予定は
2時間6分後の18:10です。

 深浦を出てから数分も経たない内に、左手に赤茶けた色をした奇岩が見えて来ました。

 深浦駅→広戸駅間で見えた、赤茶けた色をした奇岩群
です。こりゃスゴい。
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】
 上の画像から少し先で写したものです。やはり岩は赤
茶けた色をしていました。
 これは行合海岸なのかな?
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 たぶん、この奇岩群は深浦の観光スポットのひとつでしょう。距離的には深浦駅から歩いて行けそ
うな感じです。腰を据えて観光するのならば、ぜひとも見ておきたいところですね。

 広戸駅手前の海岸に並べられたテトラポットです。五
能線が走る沿岸部分には、このようにテトラポットが延
々と並べられています。荒れた時の波がいかに高いかが
伺えます。
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 深浦の次の駅、広戸には海側に柵が立てられていまし
た。これはやはり防風柵なのでしょうか? メッシュ構
造になっているのは、風の力を受け過ぎて柵が倒れてし
まうのを防ぐためなのでしょうか?
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 驫木(とどろき)駅でホームとは線路を挟んで対面に立てられて
いた看板です。ワンマン・カーの乗車位置を示したものですね。五
能線で、ホームが片側1線しか無い無人駅には、このような看板が
立てられています。
 ちなみに、ワンマン・カーは後乗り前降りなので、東能代行と弘
前行では車両の乗車位置が異なるため、看板も東能代行と弘前行の
2本が立てられています。
 画像を見ると分かりますが、この駅は海のすぐ横にあり、駅構内
への立入を制約する柵も何も設置されていません。なんとも大らか
ですなぁ。
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 驫木から3つ目の千畳敷駅の手前では、薄緑色をした広大な岩棚が現れました。名前の通り畳を千
枚は敷けそうなぐらい広くて平らな岩棚です。

 見ると道路際の駐車スペースには乗用車がそこそこ止まっていて、岩棚の上には人々の姿が見受け
られました。ここも観光スポットのひとつですな。

 千畳敷の岩棚です。不意に現れたもんでカメラを準備
しておらず、いちばんいい所の画を撮り逃がしてしまい
ました。(予習してなかったもんで・・・(^^;)
 ここの岩は、なぜか薄緑色をしていました。深浦町の
観光スポットHPによると、その昔、殿様がここに千枚
の畳を敷いて酒宴を催したとか・・・。
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 千畳敷から3つ目の陸奥赤石駅を出て間もなく、列車は日本海と別れを告げて内陸へと入って行き
ました。

 五能線の主要駅のひとつである鰺ヶ沢駅に停車すると、そこそこの乗客が乗って来て、ついに私が
ひとりでいたボックス・シートにもおばちゃんが相席しました。

 鰺ヶ沢では列車交換の為、15分ほど停車しました。待っていると、やがて隣のホームにリクライニ
ング・シートを備えた真新しい列車が入って来ました。

 持っていた携帯時刻表を見ても、このような列車は見あたりません。今日は休みなので、たぶん観
光目的の臨時列車なのでしょう。後に知った事ですが、この列車こそがジョイフル・トレインの快速
『リゾートしらかみ』だったのです。

 鰺ヶ沢から先の沿線は、よく見るローカル線の風景となりました。無人駅である中田では、大型の
一眼レフ・カメラと三脚を抱えた、いかにもマニアっぽい人がひとりだけ降り、出口ではなくホーム
の端へ向かって歩いて行きました。後発の列車の写真でも撮るのでしょうか?

 次の木造駅では、線路のすぐ横で盛大に煙を上げながら焚き火をしている人がいました。余りに近
いので窓越しに熱気を感じたほどです。ホンマ、何でもアリかい。

 五所川原駅では、隣接する津軽鉄道の駅舎と停車している車両が見えました。津軽鉄道は津軽五所
川原←→津軽中里間を結ぶ純私鉄であり、冬季には「ストーブ列車」が運行される事で有名な路線な
んだそうです。

 その他にも、7〜8月には「風鈴列車」、9〜10月には「鈴虫列車」なども運行されており、金
木駅には、『SMAP』の香取慎吾君と地元の子供達がペイントした車両が展示されているとの事で
す。一度は乗って見たい路線ですな。

 五所川原を出ると沿線の建物の数が増え街っぽくなって来ました。陸奥鶴田駅到着前には、列車右
側(西側)に見事な夕焼けが見えました。

 陸奥鶴田駅到着前に見えた夕焼けです。この辺りの五
能線は南北に走っており、2833Dは南方向に向かっ
て走っているので列車右側が西になります。
【五能線・普通列車2833Dの車窓より】

 陸奥鶴田から30分ほどで列車は奥羽本線の川部駅に到着しました。駅に着いたのは18時過ぎでし
たが、すっかり日は落ちて暗くなっていました。

 奥羽本線の川部駅です。右側のホームに私が乗って来
た2833Dが停車しています。
【青森県・川部駅】

 この駅では、私の他にも10人前後の人々が降りました。2833Dは、ここから進行方向を替え、
奥羽本線を秋田方向に向かって終点の弘前まで走ります。

 列車を降りてみると、さすがに少々冷えたので、用意していたウィンドブレーカーをカバンから取
り出して着込みました。

 これで五能線の旅は終了です。なかなか見応えある日本海の景色でしたね。車窓から海を眺めた事
は何度かありますが、五能線の列車から見た景色は、その中で最も素晴らしいものでした。同路線の
沿線は、じっくりと時間を掛けて巡ってみる値打ちがありそうです。今度来る事があれば、ぜひ快速
『リゾートしらかみ』に乗りたいものです。

 さて、これで今回の「旅」の2つの目的は果たせました。これから先は帰路になります。それはま
た次の回で・・・。

 第3部につづく・・・。


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