しかしながら、いつもの悪いクセで、単に名古屋に移動するのではなく、何か乗りに行くネタは
ないもんかと考え始めました。
そしたら、ありますがな、旅行記を始めた当時から暖めていたプランが。それは、関西人ならば誰
もが一度は考えるであろう紀伊半島一周です。(←考えへん、考えへん(^^;)
つー事で、紀伊半島をぐるりと回って名古屋まで移動する事にしました。「旅」の行程は、
とっっくの昔に立ててあります。
それは、京都から特急2本を乗り継いで名古屋に至る単純なものでしたが、移動時間は7時間以上
に及びます。問題は、今回は仕事で使う重い荷物を抱えての「旅」になってしまう事ですな。
で、当日、まずは切符を買うため、私は大阪駅の、みどりの窓口に行きました。応対した窓口氏は、
なぜか乗車券の発券に、たいそう苦労していました。
まぁ確かに、京都→名古屋の乗車券で紀伊勝浦経由なんて馬鹿げたオファーは、そうしょっちゅ
うあるもんじゃねーわな。
ともあれ、切符を手に入れた私は、特急『オーシャンアロー』に乗るべく京都に向かいました。同
特急は新大阪に停まるのですが、例によって、こだわりの列車には、なるべく始発駅から乗りません
とね。
大阪駅に到着する京都行・普通列車です。車両は、今 や東海道筋から姿を消してしまった201系。 【大阪府・JR大阪駅】 |
京都へ行くのに新快速を使わなかったのは、同列車が慢性的に混んでいるからです。まだ朝の時間
が早かったからか、京都行の普通はガラガラでした。
第1部:「ちょっとこだわりの列車」その48/特急『オーシャンアロー5号』 |
今回乗る紀勢本線の特急『オーシャンアロー』は、京都←→新宮間で1日3往復が運行されていま
す。紀勢本線の特急には、他にも『くろしお』、『スーパーくろしお』があり、『オーシャンアロー』
も含めて「くろしおシリーズ」として通番の列車番号が振られて運行されています。
その3特急の中で『オーシャンアロー』を選んだのは、使用車両として同特急専用の283系が使
用されていたからです。
特急『オーシャンアロー5号』の京都→紀伊勝浦の指 定席特急券です。私の座席は進行方向右側の窓側のD席 です。新宮方面に向いて海は右側となるので、「くろし おシリーズ」の特急でオーシャン・ヴューを楽しむのな ら右側の席です。 |
今回は、特急『オーシャンアロー5号』と『南紀6号』を乗り継いで名古屋まで行きますが、『オ
ーシャンアロー5号』は新宮が終点。『南紀6号』は紀伊勝浦が始発であり、紀伊勝浦←→新宮間で
運行区間がカブっています。
こだわりの列車には始発から終点まで乗りたいのですが、両列車の乗り継ぎ時間は20分もないの
で、『オーシャンアロー』で新宮まで行ってから紀伊勝浦まで戻っている時間はありません。
≪だったら次の『南紀』にすりゃいいじゃねぇか≫と思われるでしょうが、次の『南紀8号』は何
と4時間半後の17:12発なのです。
そうなると、どちらか一方の列車は乗り通しを諦めねばなりません。考えた結果、今回は『南紀』
の始発駅である紀伊勝浦で乗り換える事にしました。
京都で列車から降りると、『オーシャンアロー5号』は、すでに6番線に停車していました。
京都駅に停車中の特急『オーシャンアロー5号』。車 両は同特急専用の283系です。その独特なフロント・ マスクはイルカを連想させます。 【京都府・JR京都駅】 |
この283系は、整備が進む紀伊方面の高速道路網に 対抗すべく製造されたリゾート・アクセス特急車であり 急曲線の多い紀勢本線を走る先輩特急車である381系 と同じく振り子式を採用しています。 【京都府・JR京都駅】 |
283系の車内です。他の特急車と比べて、なんとな くリゾート・チックな雰囲気を感じるのは私だけでしょ うか?前方に人が固まっていますが、それはこのあとの 本文で出てきます・・・。 【特急『オーシャンアロー5号』車内】 |
指定席車に乗り込んだ私が自分の席に行くと、何と家族連れが、私の席を含む3列分の座席を占拠
して席を向かい合わせに回していました。
私が唖然としていると、気づいた家族連れは慌てて席を戻しました。やれやれ・・・。席を戻すの
にバタバタしている、この家族連れの人数を何気に数えてみると、何と11人(!)もいました。こ
りゃまた大部隊やな。
まぁ長い乗車になるし、家族で膝つき合わせてワイワイやりながら行きたいところでしょうが、他
人であるこっちは気を遣わされてかないませんからな・・・。
283系の座席です。座ってみると、まぁまぁ柔らかい座り心地 でした。近年の新型特急車は堅い座席が多くて好きになれませんが この車両は国鉄時代に製造されたものですから、座席も少し古いの でしょう。 【特急『オーシャンアロー5号』車内】 |
発車前に我が座席の通路側席の「相方」が現れました。その彼は、席に座る前に私に向かって「失
礼します」と声を掛ける実に礼儀正しい男性でした。
ほどなく、定刻の8:35が来て列車は京都駅から発車しました。我が車両の乗車率は10%足らずと
ガラガラだったのですが、なぜか車両前方に固まって座っています。どこか途中の駅からドッと乗っ
て来るんかな?
聞けば例の大家族連れが、紀勢線に入ると海は右側に来るから、大阪を出たところで右側席に移ろ
うかと算段していました。
車窓から、京都→大阪間の見慣れた風景を見ながら、特急らしい走りを期待していたのですが、な
んだか手加減気味な走りをしています。なんでやろ?
私が悶々としていると、大山崎を過ぎたところで、ようやくスピードを上げました。新快速なら停
車する高槻もスルーし、普通列車をどんどん追い抜いて行きます。
京都から27分で新大阪に到着。ちなみに、同区間を走る新快速は、途中、高槻に停まっても23
〜24分で新大阪に着きますから、『オーシャンアロー』の方が走行速度が遅い事になりますな。
新大阪でドッと乗るのかと思えば乗ったのは10人程度でした。「くろしおシリーズ」の特急は、
けっこう乗車率が高いと聞いていたのですが、まだ時間が早いからでしょうか?
同駅を出たところで、例の大家族連れのオバちゃん連中が大声で騒ぎ始めました。ウザい事この上
ありませんが、これもまた観光地に向かう列車の「風物詩」のひとつです。
新大阪を出て淀川を渡った列車は、例によって東海道本線から外れて梅田貨物線に入りました。梅
田貨物駅の傍らを通って大阪駅をパスし大阪環状線に合流。
西九条では下りの特急『くろしお』と行き違いました。いつものように大阪環状線走行中はスピー
ドは抑え気味に走っています。
弁天町を過ぎて、左手に外壁が薄汚れた大阪ドームが見えると、例の大家族連れの誰かがドームを
見ながら「汚ねぇなぁ、磨けよ!」と呻くのが聞こえました。
列車が芦原橋を過ぎるとペースが落ちました。大阪環状線から阪和線に入る列車は、いつもこの調
子です。たぶん、天王寺駅手前の構内でポイント・チェンジをする関係でしょう。
天王寺駅の手前でガタガタとポイントを渡ってから同駅に停車。天王寺では我が車両に25人乗っ
て来ました。ここでこんなに乗って来るとは予想外です。
同駅を出た『オーシャンアロー5号』は、そこそこスピードを出し、普通列車を途中駅に待避させ
て阪和線を快調に走り39分で和歌山に到着。同駅では3人が我が車両に乗って来ました。
和歌山を出ると再び列車はトバしました。カーブが増え、いよいよ振り子式特急車両らしい走りっ
ぷりです。
海南を過ぎた辺りから右手に海が見え始めると乗客が騒ぎ始めましたが、路線は、すぐ内陸に入っ
てしまったので、まだオーシャン・ヴューとは言えません。
10:34に御坊に到着。同駅では我が車両から二人が降りました。残念ながら御坊駅の紀州鉄道線ホー
ムに気動車の姿はありません。
小旅行記第5弾で乗った、この魅力あふれるローカル私鉄は、とても採算が取れているようには見
えませんでしたが、末永く走り続けて欲しいものです。また機会があれば乗りに来ましょう。
御坊を出て路線は再び内陸に入りますが、切目駅を過ぎると海沿いに出ました。御坊から25分の
11:04に紀伊田辺に到着。同駅では二人降りました。ここから先の紀勢本線は未乗車区間になります。
さらに9分走って11:14に白浜に到着。同駅では我が車両の8割の乗客が一気に降りました。何と言
っても白浜は紀伊半島随一の観光地ですからな。
同駅で我が列車が停車したホームの対面停車線には新大阪行の特急『くろしお』が停まっていまし
た。特急「くろしおシリーズ」の中で特急『くろしお』は主に新大阪←→白浜間で運行されています。
白浜を出ると路線は山間に入りトンネルが連続しました。再び海の間近に出て11:34に周参見に着。
同駅では左の停車線に紀勢線色の105系列車が停まっていました。これは新宮行の普通2331Mです。
紀勢本線の紀伊田辺←→新宮間で運行される普通列車は非常に少なく、日に新宮行が7本と紀伊田
辺行が6本しかありません。この2331Mの次の普通列車は約2時間後となります。
大阪周辺の東海道スジのJR駅では、普通しか停まらない駅ですら1時間に8本以上の列車があり
ますから、この辺りの普通列車がいかに少ないかが分かります。
周参見を出て再び山中に入り、見老津(みろづ)の手前で再び海沿いに出ました。とは言え短いト
ンネルが連続し、落ち着いて海を見る事が出来ません。
海のスナップ・その1です。電柱が邪魔ですが、その 右に細長い岩が直立しています。いったいどうなりゃこ んな岩が自然に出来るんだ? 【特急『オーシャンアロー5号』の車窓より】 |
海のスナップ・その2。荒々しい磯です。海の水は、 すごく綺麗な色をしていました。 【特急『オーシャンアロー5号』の車窓より】 |
見老津から二駅目の和深では新大阪行の特急『スーパーくろしお16号』と交換。先着している同
列車の横を我が『オーシャンアロー』は通過しました。
海のスナップ・その3。岩棚です。小規模ですが、そ れでもけっこうな広さがあります。 【特急『オーシャンアロー5号』の車窓より】 |
その先も路線は海沿いを走り続け、田並駅いったん内陸に入り、再び海沿いに戻って、本州最南端
の駅となる串本に到着しました。時間は12:04、京都からは3時間半ほど掛かっています。
この記念すべき地に降りてみたいのはヤマヤマなんですが今回は諦めます。同駅では我が車両から
降りた人はいませんでしたが、ホームには10人以上歩いている人が見えました。皆さん地元ふうの
格好をしています。
串本を出ると、右手に岩が一列に並んだ何とも異様な風景が見えました。
串本を出て右手に見えた橋杭岩。岩が行列しているよ うに見えます。天然記念物に指定されとるそうです。 【特急『オーシャンアロー5号』の車窓より】 |
路線は海沿いを走り古座で初めて交換停車をしました。やって来た対向列車は、新宮発・紀伊田辺
行の普通2330Mでした。
古座を出て右手に見えた岩棚です。串本の手前で見え たのより遙かに広さがありました。 【特急『オーシャンアロー5号』の車窓より】 |
その先は、内陸と海沿いを交互に走りながら間もなく紀伊勝浦に到着すると言う時に車掌が私の様
子を見に来ました。検札した際に私が同駅で降りる事を把握していて寝過ごさないよう見に来てくれ
たのでしょう、なかなか親切ですな。
12:31、列車は紀伊勝浦駅に到着しました。『オーシャンアロー5号』は、このあと13分走って終
点の新宮まで行きますが、私はここで降ります。京都から約4時間の乗車でした。
ホームに降りてみると40〜50人が陸橋に向かって歩いていました。勝浦もまた観光地のひとつ
ですからな。
ここで途中下車して駅舎の写真を撮るつもりだったのですが、やたら重い荷物を抱えて改札に向か
って歩いている内に動き回るのが面倒になり、駅舎の写真は諦める事にしました。(^^;
第2部:「ちょっとこだわりの列車」その49/特急『南紀6号』 |
次に乗る特急『南紀』はJR東海が運行する列車で、名古屋←→紀伊勝浦間で日に3往復が運行さ
れています。これはJR西日本「くろしおシリーズ」の京都/新大阪←→新宮間で日に9.5往復と比べ
ると3分の1の本数ですな。
特急『南紀6号』の紀伊勝浦→名古屋の指定席特急券 です。座席は進行方向右側の窓側席です。 |
紀伊勝浦駅に停車中の名古屋行・特急『南紀6号』で す。車両はJR東海が誇る新鋭特急型気動車キハ85系 です。 【和歌山県・JR紀伊勝浦駅】 |
キハ85には、旅行記第16弾の特急『ひだ16号』で富山から名古屋まで乗りましたが、この時
はグリーン席だったので、普通座席は今回が初めてです。
『南紀6号』は、1号車:指定+2号車:自由+3号車:指定の3両編成でした。『オーシャンア
ロー』は9両編成でしたから、名古屋方面からの利用者は、そう多くないのでしょうな。
車内に入って見ると、座席の位置が高くて窓の縦寸も大きいので車内は明るく開放的な印象を受け
ました。列車名に付く「ワイドビュー」は伊達ではないのです。
キハ85の一般座席です。座面はやや堅めですがバケット式にな っていてフィット感は良く、座り心地は悪くありませんでした。 【特急『南紀6号』車内】 |
客室内の床は、座席の部分が嵩上げされ通路より高く なっています。座席の足元も283系と比べて広く取ら れていました。 【特急『南紀6号』車内】 |
定刻の12:46、『南紀6号』は、私の乗る車両の乗客は8人で紀伊勝浦から発車しました。この列車
では、始発駅から車販が行われていました。
紀伊勝浦から新宮まではJR西日本の管内ですが、見れば乗務員はJR東海の職員でした。この列
車はJR東海のものですが、ふつうは他社の管内に入ると乗務員は、そこの職員に代わるものです。
後に鉄道雑誌で読んだところでは、これはJR西日本が運行する車両が電車、JR東海が気動車で
ある関係だそうです。
電車と気動車では免許が異なるのですが、『南紀』がJR西日本管内に乗り入れる15キロ足らず
の紀伊勝浦←→新宮間のためだけにJR西日本が気動車用運転士を配置するのが余りにも非効率なた
め、JR東海乗務員での運行を認めているのです。何でも鉄道業界では、このようなケースは希有な
んだとか。
紀伊勝浦を出た列車は二駅目の那智で交換停車しました。同駅で105系で編成された新宮発・串
本行の普通2332Mと交換。那智を出ると右手に海が見えました。
那智駅を出たところで見えた海です。この辺りはトン ネルも少なく、クリアに海が見えました。 【特急『南紀6号』の車窓より】 |
そして紀伊勝浦から17分の13:03に列車は新宮に到着しました。同駅では、我が車両に15人乗り
ました。
新宮駅に隣接するJR西日本・新宮運転区の留置線には、『オーシャンアロー』の283系やJR
東海の一般型気動車などが留置されていました。
新宮は世界遺産で知られる熊野古道観光の起点駅でもあります。駅の北西1.3キロには熊野速玉大社
があり、古道によって内陸にある熊野本宮大社や熊野那智大社と結ばれているそうです。
また、市内を流れる熊野川をウォータージェット船で遡り、途中で北山川に入ってしばらく上流に
上った所にある湯の口温泉には、廃山となった地元の鉱山で使用されていたトロッコ列車を流用した
観光鉄道が走っています。
新宮から先の紀勢本線はJR東海の管内に入り路線は非電化となります。ちなみに、普通列車の運
行本数は、上りの多気行が8本、下りの新宮行が7本でした。
新宮を出て熊野川を渡り、次の鵜殿駅の手前まで来ると右手から合流して来る線路がありました。
これは近くにある紀州製紙への引き込み線で、見ればコンテナ貨車や構内入換機関車、DD51形デ
ィーゼル機関車などが停まっていました。
通過する駅の駅名票を見ると、帯の色がJR西日本のブルーからJR東海のオレンジに変わってい
ました。列車はそこそこトバしていましたが、まだ余力がありそうです。たぶん線形の都合で余りス
ピードが出せないのでしょう。
ちなみに、キハ85は振り子式車両ではありませんが、アメリカのカミンズ社製の強力なエンジン
を搭載し120キロ運転が可能な能力を持ちます。
車内では、車販でコーヒーを頼んだおじいさんたちが車販の女の子に仕事のことやらあれこれ聞き
出していました。お年寄りは話し好きですからな。
途中、神志山駅を通過した際、対面ホームに新宮行の普通329Cが停まっているのが見えました。
この辺りの海岸線は七里御浜と呼ばれる名所で、何でも日本の渚百選に選ばれているそうです。
海はチラホラ見えるものの、路線は家並みの間を走っています。JR西日本側の路線が山がちでト
ンネルの連続だったのに対し、こちらはおだやかな平野です。
新宮から20分の13:23、列車は熊野市に到着。同駅は名勝の奥瀞峡への入口にあります。ここでは
5人乗りました。
熊野市を出るとトンネルが連続するようになり、地形は険しくなりました。
新鹿駅付近を通過中に見えた新鹿海水浴場です。熊野 灘に面した新鹿湾内にあり水がとても綺麗でした。 【特急『南紀6号』の車窓より】 |
車内では、我が車両に入って来たオジさんが車掌から指定席券を買いながら文句を言うのが聞こえ
ました。何でも自由席に乗ったら禁煙車だったので、仕方なく喫煙の指定席に来たとの事です。
禁煙車でもデッキならタバコが喫えるはずですが、特急料金を払って乗っていながら座席でくつろ
いで喫えないのが納得いかないのでしょう。
車窓を眺めていると、この辺りは、連続するトンネル間に湾を頂いた港町がある地形で、先に通過
した新鹿を含め、二木島、賀田、三木里、九鬼の各駅が、そのような地形にありました。
トンネルと、海がチラ見えする地形を走り続けた『南紀6号』は、13:50に尾鷲に到着しました。同
駅では左の停車線に多気行の普通330Cが停まっていました。尾鷲では我が車両より5人降り4人
乗りました。
尾鷲を出た路線は相賀を過ぎると山間に入り、三野瀬の手前で再び海沿いに戻りました。14:14に列
車は紀伊長島に到着。同駅では5人乗りました。
紀伊長島を出ると右手の湾内に養殖イカダが見えました。この辺りは養殖真珠で知られていますが、
あのイカダもそれでしょうか?
路線はすぐにトンネルが連続する山間へと入りました。トンネル区間を過ぎると沿線風景は峡谷と
なり、まるで高山本線みたいな山岳路線に変貌しました。
途中、三瀬谷駅で交換停車し、下りの『南紀5号』と交換しましたが、あちらの列車は8割ほどの
乗車率で、なかなか盛況でした。
しばし山間を走り続け、山間部を抜けて相可駅を過ぎ、右から参宮線が合流すると、列車は15:03に
多気に到着しました。同駅での乗降はありませんでした。
ここから先の紀勢本線は、参宮線方面とを結ぶ普通列車や快速『みえ』が加わり、列車の本数が、
ぐっと増えます。
さらに6分走って右から近鉄の山田線が寄り添って来ると松坂に到着。同駅では右の停車線にキハ
11形軽快気動車が停まっており、その屋根では、雨どいに溜まっている水をハトが飲んでいました。
松坂では4人が下車。
同駅を出て次駅の六軒で伊勢市行の普通941Cを待たせて通過。さらに2駅進んで阿漕で交換停
車し、鳥羽行の快速『みえ11号』と交換しました。
阿漕を出て左から近鉄・名古屋線が寄り添って来ると列車は15:26に津に到着。同駅では、新宮を出
たところで車販の娘に話しかけていた、おじいさん2人組が降りて行きました。
津から先の紀勢本線は北西の亀山方面に向かいますが、『南紀6号』は、ここから北東の名古屋方
面、関西本線・河原田駅へ向かう第三セクターの伊勢鉄道線に入ります。
名古屋からJRで鳥羽/南紀方面に向かう場合、関西本線と紀勢本線は亀山で接続していますが、
少々遠回りになる上に両線の線路は直通するような配線になっていません。
そこで、名古屋と鳥羽/南紀方面を直通するため、関西本線の河原田と紀勢本線の津の間を結ぶ短
絡線として国鉄・伊勢線が建設されましたが、同線は利用者の低迷のため廃止対象路線に選定されて
しまい、第三セクターの伊勢鉄道として転換開業したのでした。
三セク開業後も伊勢鉄道線内の利用者は、それほど増えていませんが、特急『南紀』や快速『みえ』
が同線を通過して運行されており、その通過収入で収支はトントンだとか。
伊勢鉄道線に入った『南紀6号』はスピードを上げました。同線は線形が良く高速運転が可能なの
です。途中、見掛けた車庫には、伊勢鉄道の新鋭軽快気動車イセ3形がいました。
伊勢鉄道線内で唯一停車する鈴鹿では乗降なし。列車は河原田で関西本線に入り、15:47に四日市に
到着。同駅でも乗降はありませんでした。
四日市から10分で最後の停車駅桑名に到着。同駅では左の停車線に名古屋行・普通318Gの3
13系電車が停まっていました。同駅での乗降もなし。
そして桑名を出た『南紀』は、16:17に終点の名古屋に到着しました。紀伊勝浦からは3時間31分
の乗車でした。
第3部:「ちょっとこだわりの列車」その50/快速『みえ15号』 |
本日の目的地である名古屋に到着しましたが、まだまだ仕事までは時間があります。そこで、これ
また乗りたかった列車である快速『みえ』に乗って、いま来たばかりの道程を鳥羽まで引き返します。
この無意味で馬鹿げた乗り方こそが鉄道ファンの真骨頂と言えるでしょうか?(^^;
快速『みえ』は、関西本線、伊勢鉄道線、紀勢本線、参宮線を経由して名古屋←→鳥羽間で運行さ
れている列車であり、日に12往復が運行されています。
経由する路線が関西本線以外は非電化のため、車両にはキハ75形一般型気動車が使われています。
快速『みえ15号』の指定席券です。同列車は一般型 気動車で運行される快速ですが、一部に指定席が設定さ れています。 |
名古屋駅に停車中の快速『みえ15号』です。車両は 私のお気に入りであるキハ75形一般型気動車の2両編 成です。 【愛知県・JR名古屋駅】 |
快速『みえ』には、小旅行記第3弾で名古屋から四日市まで乗りましたが、今回は終点の鳥羽まで
乗り通します。
運行本数の多さからも分かるように、同列車の乗車率は、けっこう高いため、今回は確実に座るた
めに事前に指定席を買いました。
キハ75の座席は転換クロス・シートで、快速『みえ』では2両編成の鳥羽方車両の1番〜6番列
まで、つまり片方の車両の半分の座席が指定席に設定されています。
すでに立ち客もいる列車に乗り込み、自分の指定席に行くと、そこには女子高生が二人座っていま
した。私が指定席券を見せて、そこが指定である事を告げると、彼女たちはあたふたと移動して行き
ました。この列車に指定席があるのを知らんかったんかな?
快速『みえ15号』は乗車率110%ほどで定刻に名古屋駅から発車。これまで私が乗った時も、
だいたいこんな混み具合でしたな。
新しい気動車キハ75は、特急『南紀』とタメの走りっぷりで関西本線を疾走して行きます。最初
の停車駅である桑名到着前に検札が来ました。
名古屋から18分で桑名に到着。同駅は、近鉄・名古屋線、養老線、三岐鉄道・北勢線の乗り換え
駅です。同駅では乗客の3分の2が一気に降り、立ち客はわずか数人になりました。
さらに10分走って四日市に到着。同駅から先は、『南紀』の時と同じく伊勢鉄道線に入るため、
企画切符やパスの類で乗車している場合は、伊勢鉄道線は別運賃となる案内放送がありました。
あと、四日市から関西本線の亀山方面に向かう人は、ここで乗り換えとなります。同駅では数人が
降りました。駅構内には伊勢鉄道のイセ3形気動車も見えます。伊勢鉄道線の途中駅で降りる人は、
あの列車に乗り換える事になります。
四日市を出た列車は、しばし関西本線を走り、河原田駅の手前で伊勢鉄道線へと入りました。17:06
に鈴鹿に到着。同駅では数人が降りました。
伊勢鉄道線をさらに11分走り、紀勢本線と合流して津に到着。同駅では3人が乗り降りしました。
指定席に残る乗客は2人。構内を見渡すと、名古屋へ向かう、土、休日運転の特急『南紀84号』が
いました。
津を出た所で、同駅に乗り入れている近鉄・名古屋線の特急とすれ違いました。外を見ると、夕日
が雲に隠れていました。ぼちぼち暗くなって来ましたな。
松坂のひと駅まえの六軒で交換停車があり、快速『みえ20号』と交換しました。六軒を出て間も
なく松坂に到着。同駅では10人ほどが降りました。
松坂は名松線の乗り換え駅ですが、案内放送によると次の列車は1時間15分後の18:50発とのこと。
ちなみに名松線は、日に8.5往復しか列車が運行されないローカル線です。
松坂では7〜8人が乗りましたが指定席は、とうとう私ひとりになりました。さらに7分走って多
気に到着。紀勢線と参宮線が分かれる同駅で、乗客は、ほとんど降りて1両目は何と私を含め2人に
なりました。
多気で運転士が交代しましたが、車掌は、そのままでした。同駅を出た列車は紀勢本線から左へ分
かれ参宮線に入りました。
沿線は田んぼと家屋のローカルな風景となりました。ほどなく、車両に入って来た車掌が誰も座っ
ていない左列の転換クロス・シートの背もたれを逆方向に倒して行きました。
これは鳥羽での折り返し運転の準備でしょうが、まだ伊勢市を始め途中4駅に停まるのですが、も
う乗車は、ほとんどないって事か?
多気から12分で伊勢市に到着。同駅は近鉄・山田線との乗り換え駅です。伊勢市では1人降りて
3人乗車。ここでは4分停車し、快速『みえ22号』と交換しました。
伊勢市から先の参宮線は運行本数が減ります。次の五十鈴ヶ丘では列車全体で5〜6人が乗りまし
た。その次の二見浦では列車から5〜6人降りて4人乗りました。同駅の最寄りには、二見浦、夫婦
岩、伊勢・安土桃山文化村などの観光スポットがあります。
最後の途中停車駅となる松下での乗降はありませんでしたが、ホームには、お孫さんを連れたおば
あさんがいて孫に列車を見せていました。
本来、駅に立ち入るには入場券が要りますが、自動改札機もない地方の無人駅で、そんな野暮な事
は乗務員も言いません。こんな光景が見られるのも地方ならではですな。
次は終点の鳥羽ですが、実は松下←→鳥羽間には、池の浦シーサイドと言う臨時駅があります。同
駅はゴールデン・ウィークと夏期に営業する駅で、駅の北にある、池の浦海水浴場の最寄り駅となっ
ていますが、同海水浴場までは山道を越えて1キロちょっとあるため列車での利用者は少ないようで、
この臨時駅に停車する列車も年々減っているとか・・・。
池の浦シーサイドを過ぎた路線は海沿いに出ました。ほんの短いシーサイド区間を通り抜け、快速
『みえ15号』は終点の鳥羽に到着しました。名古屋から1時間45分の乗車でした。
鳥羽駅に到着した快速『みえ15号』です。同列車は 20分後に『みえ24号』として折り返します。列車か ら降りて見ると鳥羽駅のホームは閑散としていました。 幅の広いホームや両停車線外側にある留置線が盛況だっ た往時を偲ばせますが、今では見る影もありません。 【三重県・鳥羽駅】 |
鳥羽駅です。JR参宮線の起終点駅であると共に、近 鉄・鳥羽線と志摩線の境界駅でもあります。駅はJRと 近鉄で共用しており、山側がJR駅舎、海側が近鉄の駅 舎になっています。これはJR側の駅舎です。 【三重県・鳥羽駅】 |
こちらは海側の近鉄駅舎。海側にはバス・ターミナル を始め各種施設があるので、こちらの方が利用者は多い ような気がします。 【三重県・鳥羽駅】 |
鳥羽は、南の伊勢志摩と共に関西では知られた観光地であり、鳥羽水族館やミキモト真珠島などの
観光スポットがあります。ちなみに、水族館の方は私も訪れた事があり、なかなか面白い所でした。
観光が売りの鳥羽ですが、鉄道に目を向けると、ここへの鉄道利用者はJRより近鉄の方が圧倒的
に多いのですが、その理由が列車の運行本数の違いである事は一目瞭然です。
その運行本数を平日の13時台で見ると、JRが名古屋行の快速『みえ』と伊勢市行の普通列車が
各1本ずつなのに対し、近鉄は名古屋行の特急2本、難波行の特急1本、上本町行の特急1本、京都
行の特急1本に伊勢中川行の普通列車2本と、JRの3倍以上の列車が運行されています。
これほど本数に差があると、JRの全国連絡と言うアドバンテージもほとんど生かせず、近鉄利用
者の方が多くなるのも当然です。
もっとも、仮にJRが大阪や名古屋から鳥羽行の特急を運行出来たとしても、運賃や特急料金の違
いから近鉄に太刀打ちできないのは明白でしょうし、今の近鉄の乗車率を見ても、通年でそれほど多
くの需要があるとは思えません。て、言うか、1時間に7本以上もの列車を運行している近鉄の採算
が取れているのか知りたいですな。
いささか諦め感のあるJRですが、それでも、元々は走っていなかった快速『みえ』の運行を始め
るなど、いちおう集客努力は払っており、『みえ』の登場によって、近鉄からいくらかの乗客の乗り
換えがあったとか・・・。
さて・・と、『みえ』の乗車も果たしたし、それでは再び名古屋に向かいましょう。JRさんには
悪いのですが、名古屋へ戻るのは便利な近鉄特急を利用させて貰います。(^^;
近鉄の鳥羽始発・名古屋行特急の乗車券/特急券。近 鉄の特急は全席指定です。運賃1,670円に指定料金込み の特急料金1,280円。これを仮にJRの特急に当てはめ ると、運賃2,380円に特急料金は2,290円となります。近 鉄は格安ですな。 |
鳥羽駅に停車中の名古屋行・特急1812列車です。車両 は近鉄の特急型22000系と12200系の併結でした。私が乗 るのは、写真に写っている前方編成の22000系です。 【三重県・鳥羽駅】 |
見れば名古屋行特急は車内清掃中だったのでホームで待つ事にしました。その間に、隣の停車線に
賢島始発の上本町行特急が到着し先発して行きました。乗車率は30%ほどでしょうか?
ほどなく名古屋行特急のドアが開いたので乗り込みました。
22000系の車内です。新鋭車両だけに間接照明を使用 した洗練されたデザインの内装です。 【近畿日本鉄道・特急1812列車の車内】 |
座席です。新鋭車の座席にありがちな、ちと堅めなタイプでフィ ット感はイマイチでした。どうも私は新型車両の座席は好きになれ ませんな。 【近畿日本鉄道・特急1812列車の車内】 |
ほどなく定刻が来て、特急1812列車は、私の乗る2号車は乗客わずか2人で鳥羽から発車しました。
走り出すと、おー速い速い。やはり気動車とはスピード感が違います。
8分で最初の停車駅五十鈴川に着。同駅では乗降なし。さらに2分で宇治山田に停車。同駅では我
が車両に4人乗りました。鳥羽からここまでの路線は鳥羽線で、ここから先は山田線になります。
次の停車駅伊勢市までは、わずか600メートルしか離れていません。すぐに到着。同駅では3人
乗って来ましたが前の車両に移って行きました。
さらに13分走って松坂に到着。同駅では、ひとり降り6人乗りました。松坂から9分で伊勢中川
に到着。同駅は大阪線の乗り換え駅で、大阪方面行特急の乗り継ぎなども行われますが、我が車両か
らは、ここでの乗降はありませんでした。ここから先は名古屋線に入ります。
10分走って津に到着。同駅では8人乗りました。見れば構内のJR線ホームに快速『みえ』の姿
がありました。日はすっかり暮れて外は真っ暗です。
さらに10分で白子着。同駅では乗降なし。12分で次の四日市に到着。同駅では、車内で車掌に
湯の山温泉への行き方を聞いていたオバさんが降りました。ここでは6人乗車。
11分走って最後の停車駅となる桑名に到着。同駅は養老線(現・三セクの養老鉄道線)の乗り換
え駅で、ここではふたり降りましたが、何とひとり乗って来ました。
ここから近鉄名古屋までなら、わざわざ別料金の要る特急に乗らんでも、7分後に出る急行で行っ
ても名古屋に着くのが11分遅くなるだけです。この人は、よほど急いでいるか、お金を気にしない
か、それとも単に、この列車が別料金必要だと知らないかですな。
そして20:17、特急1812列車は終点の近鉄名古屋に到着しました。鳥羽からは1時間36分の乗車で
した。ふむ・・・、往路の快速『みえ』より所用時間は9分短いだけだったか・・・。
近鉄特急と快速『みえ』の所要時間が大して変わらないのでのであれば、JRより570円余分に
払って快適な近鉄特急を使うか、それを節約して快速『みえ』で行くかの選択になりますな。もっと
も、近鉄特急は毎時2本運行されているので利便性で勝っていますが・・・。
さてと、お楽しみは、ここまでで、現実の世界に戻って「夜のお仕事」に参りましょう・・・。
明けて翌朝。徹夜でヘロヘロの状態で大阪へと帰ります。
名古屋駅に停車中の当駅始発・新大阪行の『こだま5 93号』。名古屋始発の西向き1番列車となります。車 両は300系。 【愛知県・JR名古屋駅】 |
定刻の6:22に名古屋駅を出発した『こだま593号』は、途中の全駅に停車しながら7:27に終点の
新大阪駅に到着しました。
新大阪駅に到着する尼崎行・普通列車です。車両は2 01系。 【大阪府・JR新大阪駅】 |
大阪駅に着いて今回の「旅」は終了です。ようやく念願の紀伊半島一周を果たせました。紀勢本線
には魅力的な駅が多そうなので、また時間が取れたらゆっくり訪れてみたいものです。
『列車まかせの旅』第29弾、おわり。
■ 旅行記第29弾 ■ | ||
第28弾 パート2 |
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